男に廊下へ呼び出されたスズは、初めて会う彼が自分に何の用なのか考えていた。 けれども答えは出そうになかった。
スズが出そうもない答えを模索しているなか男は「その、」と言いづらそうに口を開いた。
「サクラ少将。変なことを聞くようで申し訳ないのですが・・・近頃、誰かに頻繁に写真を撮られてはいませんか」
「!」
スズの頭は写真という単語に素早く反応した。 そしてここ最近、自分の身の回りに起きていることが頭の中でぐるぐると回る。
「実は俺・・・あなたの写真を集めていました」
「え?」
思わず目を見開いた。
「・・・あなたが、撮ってたの?」
そして恐る恐るそう聞いた。
それを聞いた男は即座に否定する。
「いえいえ、違います。俺は撮られたのを買ってただけで・・・」
「買って・・・?」
「その・・・あなたの写真を売りさばいている男がいるんです」
「・・・!」
まさか、という言葉が真っ先に頭にうかんだ。 口に出そうにも唇が上手く言葉を拾ってくれない。
「なん で、」
やっと発せられた言葉は、そんな言葉だった。
「なんで・・・?」
「それは・・・サクラ少将が素敵な方だから・・・」
「・・・」
「っ・・・。すいません!俺、サクラ少将の写真だと聞いてつい買って・・・しまって・・・。勝手に写真を撮られてしまったあなたの気持ちも考えず・・・」
男は床に手をついて謝った。
「本当に馬鹿です。けど!俺、サクラ少将の事が好きで、憧れてて・・・写真だけでも、眺めてたくて」
耳を真っ赤に染め上げた男は、頭を床につけた。 それを見ていたスズは言葉につまった。
(写真・・・いま、好きって・・・あれ?)
頭も上手く回らなくなった。その代わりにスズの顔も赤くなる。
「と、とりあえず!私の写真が売られてる、の?」
「・・・はい」
「で、それをあなたが買ってると・・・」
「いままでは。もう買わないと決めました」
「そ、そっか!そうなの!」
よかった!とスズは簡易な返答を続けた。 そしてそのままアハハと真っ赤な顔で笑う。
「サクラ少尉!!」
「は、はい!!」
「俺が、此処に来たのは写真の事を謝るためだけじゃないんす」
「へ?」
男はさっき見た写真のことを話しはじめた。
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