「暑い日は水出しのレモンティーに限りますね」

「スズちゃんきてから、俺もすっかり紅茶派だわ」

「ありがとうございます」

スズとクザンは、スズの淹れたレモンティーを楽しんでいた。

水出しのレモンティーとは、熱湯で淹れるのではなく、水で淹れるレモンティーのことである。
水出し法は水そのものの味が出るため、蛇口をひねっただけの水は適さない。なかなかシビアな方法である。
基本的に前の日の晩に準備し、翌日に楽しむものだ。
普通のお湯淹れに比べ、驚くほどの繊細な風味が味わえ、手間をかけるだけの価値は十分にある。

「レモンのいい香り」

「夏はこういうのが一番飲みたくなるよねェ」


はぁ、


2人してのんびり過ごしていた。

そこに扉を叩く音がした。


「どうぞー」

クザンが入室を許可すると、扉が遠慮するようにゆっくりと開いた。
そしてその人が一人通れるほどの扉の間から男がひとり顔を出した。

「すいません、お邪魔します」

スズもクザンも彼に見覚えがないため、二人して顔を見合わせ、首をかしげる。


「あ、えっと。コビーの友人です。いつもあいつがお世話になってます」

「コビーのお友達ですか!」

「あぁ、コビーってガープさんとこの」


「その、何と言いますか・・・。サクラ少将だけにちょっとお話がありまして、」

「へ?私ですか?」

突然のご指名。スズは自分を指さして目をぱちくりとさせた。
男はそれを見て一度だけコクンと頷くと扉を大きく開いた。

「あの、すいません。外で聞いて貰っていいですか。暑いですけど」

「はい、今いきます!」

スズはティーカップとソーサーを机の中央へ移動させてから、部屋を出た。
その姿を何事か、とクザンが見つめる。

(あららら、もしかして告白タイム?どうするかねェ。俺ここにいるべきか?)

扉の向こうへと行ってしまったスズがやけに遠く感じた。


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mokuji


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