しばらくして、マシュー率いる海軍兵士たちが現場に到着した。

黒服たちの半分以上は出血によって死んだ後で、残ったものも重傷だったため救護班の延命措置が行われた。


「スズさん!大丈夫ですか?!」

マシューが丸いお腹を弾ませながらスズに駆け寄る。

「はい、ご心配おかけしました。この通り大事ないです」

血まみれの姿に力ない言葉。
説得力をまったく持たない様子にマシューは「そうですか」と言うことができなかった。

「マシューさん、スズちゃんは俺が見とくから。これでも無傷なのよ。心配せずにあいつらの連行たのむわ」

「あ、はい!そうですか!わかりました、現場の指揮に戻らせていただきます!!」

深くおじぎをすると、マシューはサロメの船のほうへと戻って行った。




「スズちゃん、まだまだ体戻りそうにない?」

「はい・・・まだ全然感覚がもどって、きません」

「そう」

青雉は少し悩むような仕草を見せ、「じゃあ」とスズに尋ねる。

「体の感覚もどるまで膝枕でもしててもらおうかな。眠くなってきた」

「は?」

「だって勿体ないでしょ、動けない間の時間。その時間にも給料は出てるんだから、しっかり働いてもらわないとね」


「クザンさんが寝てる間にも給料は発生していることをお忘れなく」と言いかけてスズはやめた。
スズが青雉の補佐になったついこないだのやり取りを思い出したのだ。


「クザンさん。
膝枕は、補佐のお仕事に はいるのですか?」


挑戦的な笑みでスズが尋ねる。
青雉もあのやり取りを思い出したようでクスリと笑った。

「そうだよ。」

あの日と同じような会話なのに、こんなにも違うのかと、スズには少しそれがおもしろかった。

(余裕がでてきたのかなぁ・・・)


木の幹に背を預けて座っているスズの太ももに、青雉は頭を置いてごろりと横になる。

そして、おでこに常備されているアイマスクを目のほうへずらし「おやすみ」とスズに告げた。


「おやすみなさい」

少し照れたような声でスズはそう返した。


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mokuji


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