コビーと別れた男は1人廊下を歩いていた。
(なんか罪悪感わくよな。さすがに)
見知らぬところで自分の写真が取引されている。 それがどんなショックを与えるか、男は考えていた。
(やめてくれって言うんだろうな、やっぱり)
今まで彼女自分の持つ写真の存在を知らぬのをいいことに、好きに集めてきた申し訳なさ。 彼女の気持ちを考えようとしなかった自分の浅はかさ。 今になってそれらは男にずん、とのしかかった。
そんな、自分を苛む男の前を例の写真売りが横切った。 男は思わず足を止める。
「わっ、びっくりした・・・」
「お久しぶりですねぇ」
「なんだ、お前俺のこと覚えてたのか」
「ご贔屓いただいてる方の顔は目を瞑っても思い描けますよ」
くくく、と写真売りは笑うと懐から茶封筒を取り出す。
「今日はねぇ、特別なのがひとつ。いかがです?」
写真売りは茶封筒から写真を半分ほど覗かせ、男に見せる。
「これ・・・」
「素敵でしょう。どうです?1枚5000ベリーで」
写真売りは開いた手をパーに広げて、男へと向けた。
「ばかか!こんなもん買えるか!! それにな、俺はもう写真は買わねぇ。お前とはもう会う必要もねぇんだ。」
男はそう言い切ると、写真売りの横を通り、先へと足を進めた。 後ろから「そうですか、残念です」という写真売りの声が聞こえた気がした。
(おいおいおい、あれは洒落にならんぞコビー。 これはさすがに、俺でも我慢ならねぇ・・・!)
男の足は早く早くと加速する。
(早く、サクラ少将のところに!)
男は青雉の執務室へと走った。
*prev next#
[ 58/80 ]
mokuji |