「いや、うん、ごめん。ちょっと用件だけ言いすぎた。スズちゃん、ニコ・ロビンって知ってる?」

わなわなと震える彼女をいさめるように言う。
それが聞いてスズはパッと顔つきが変わる。

「あの8歳で手配書の?」

数多き手配書の中なんとなく覚えていた。
黒髪の悲しげな目をした少女。すっと通った鼻筋が印象的だった。

「そうそう。あいつ探しにいこう」

「? わざわざクザンさんが出向くほどの何かが?」

いや、それより。

「それなら普通にセンゴクさんに許可いただけるのでは?」

(そんなことしたら軍艦で出っ払うことになるんだよ・・・)

スズの鋭い指摘に、うっと言葉が詰まる。
しかしスズの追撃は止まない。


「クザンさん?」

じっと見つめる青い目が、痛い。


「(仕方ないか、)・・・ごめん、スズちゃんお休み頂戴」

「最初からそう頼んでくださればいいのに。」

「あれ、怒らないの?」

いつもなら「サボリなんて」「何言ってるんですか」と怒るスズ。その彼女にしては寛大すぎる返答だった。

「明日、私お休みなのお忘れですか?」

「知ってるよ」

「どうせ私がいないと寝てばかりなのですから、この際外でうろうろしてるほうが健康的です。」

スズのいない執務室。クザンがソファで眠りこける姿は容易に想像できた。


「じゃあ、」

「ええ、今回だけですからね。」

「さすがスズちゃん。可愛くて仕事の出来るスズちゃん俺大好き」

(・・・!)

「調子のいいこと言わんでください!!」

机に片方の手で頬杖をしながら大人の笑顔を向けるクザン。それを思わずカッコイイと思ってしまったスズは「違う違う」と独り言をつぶやきながら机の上の書類に向き直った。


(あれはクザンさん、あれはクザンさん・・・)

(顔真っ赤っかにしちゃってまァ。壊れたペンで何してるのやら・・・)


クザンは頬杖のまま、先ほどまでの爽やかな笑みではなく小動物を眺めるようにニマニマとスズを観察した。


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mokuji


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