スズとクザンは食堂で昼食を摂り終え、執務室に帰って来た。
「カレー、好きなんだねェ」
「はい!本部のカレーはすごく美味しいです。生姜焼きとコロッケ定食に何度か浮気しましたが、やはりカレーが一番でした」
「うん、確かに俺も美味しいと思う。それに生姜焼きもコロッケも。」
「どれも魅力的ですよねえ。あぁ、今度は味噌ラーメンにも浮気したいです」
スズが自分のふしだら具合を話していると、不意にクザンの机に置かれた黒いカメラが目に入った。
「あれ、クザンさんのですか?」
カメラを指さしてクザンに尋ねる。
「うん、そうだよ。こないだの掃除のときに見つけた」
「なかなか立派なカメラですね。大きい・・・」
この間の部屋の大掃除のときに出てきた黒いカメラ。フィルムが残っているから、とクザンがとっておいたものだ。
「フィルムまだ残ってるみたいなんだけど、古いからなァ。撮れないかもしれないけど」
「試しに何か撮ってみては?」
「・・・じゃあスズちゃんそこ立ってて」
「!」
クザンは机のカメラを手に取ると、レンズをスズのほうへ向けた。
「わ、ちょ、いきなりですか!」
レンズと目が合って、スズは気恥ずかしそうに一歩二歩と逃げ惑う。
「試し撮り、試し撮り。」
「でもっ」
「はい、撮るよー」
「え、あっ、 はい!」
「チーズ」
パシャ
クザンの押しに流されるまま、スズはビシリと直立で被写体になった。
「現像してみないとわからねェが・・・カメラはちゃんと動くみたいね」
「・・・」
「どうした?」
直立で立ったまま、顔も写真のように止まったまま、口だけがゆっくり動いた。
「そうか、この音だ。カメラの・・・そうだ。」
「?」
何も分からないクザン。それとは対照的に、スズの目からはウロコがぽろりと落ちた。
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mokuji |