「・・・夜だけなの?その気配って」
「いえ、近頃よく。廊下を歩いているときフッと、背後に誰かいる!と思うことがあってよく振り返るんですが・・・誰もいないんです」
最初はオバケかなあと思っていたんですが、と続けるとあとは黙り込んだ。 何日にもわたって続く不審事。クザンはそれを聞いてスズにストーカーがいると確信した。
「何もされてない?」
「今のところなにも」
「良かった。何なら俺が何か対策してみるけど、どうする?」
聞くまでもなく、クザンはこれまで以上にスズの周りに目を光らせるつもりだ。けれど一応、本人の意思も聞いておこうと尋ねる。
「きっと、大丈夫です。」
えへへと笑い「ありがとうございます」と頭を下げた。
「ストーカーは私を好いてくださってるんですよね?なら、その相手をするのは私一人じゃないとフェアじゃないです。」
「でも、もしもって事もあるから、おじさんに任せるほうがいいと思うよ?」
「迎え撃ってみせます」
正拳突きのような動きをするスズ。風を切るいい音が鳴る。 クザンはため息をついて、スズの頭に手を置いた。
「もう。危ないと判断したら手を出すからな」
「はい」
スズの顔にはいつものような笑顔が浮かんだ。 その顔を見て、クザンは逆に不安を感じる。
(ただ後ろをついて回るような奴ならいいんだけどねェ・・・)
涼しい室内にいるのに、クザンは掌に汗が滲むのを感じた。
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mokuji |