判明キラキラと太陽を移す海のような瞳。 誰だかわからない相手に、時には何かわからない物へと向けられたその青い目。 どれ一つとしてこちらを向いているものはない。 けれど、その目を追い掛け、見つめる男が一人。暗い部屋に存在した。 「ああ、可憐だ」 男は向こうを向くスズの顔を指で優しく撫で、漏らすように息を吐いた。 「まさに、天使!」 男は撫でていた指をぺろりと舐める。 それは愛しげに。純愛を楽しむ紳士のように。 「天使は常に、我らの上に公平にあらねばならない」 誰に語るでもなく、呟いた。 「求めよ、さらば与えられん。だから僕はみんなのために彼女の笑顔を分け与えようじゃないか!」 部屋の外には漏れないその声は、ただ部屋の中でぐるぐると行き交う。 男が口に出し男だけが聞くその言葉らが普通から逸していると非難する者は、この部屋に存在しなかった。 |