「スズちゃん、この書類をちょっとおつるさんとこまで持ってってくれる?」

「あ、はい!任せてください」

珍しく仕事(という名の掃除)をしているクザン。
時折、書類処理の修羅場と化す青雉執務室だが、今日は暇な日。
新たに掴まった大物海賊もいなければ、なにかと厄介ごとを押しつけてくる世界貴族からのお呼び出しも無く、実にまったりと過ごしていた。

執務室を出たスズはまっすぐおつるさんの部屋へ向かう。

(あ、赤犬大将のサイン・・・)

自分の持っている書類のサイン欄にはサカズキのサインが記されていた。

(・・・勝手に自分のだと勘違いしてゴミと一緒に置いてたんですね)


執務室でいらないもの・いるものを分ける作業中のクザン。
彼の机横に設置されたダンボールの簡易ゴミ箱には常時たくさんの紙束が積まれている。

今朝、スズはそれに足を引っ掛けて盛大に転んだ。

『うわあ!!』

その時、おでこで着地してしまったスズは頭に大きなたんこぶができた。
傍で含み笑うクザンにキッと目をやると、スズは立ち上がって言った。

『クザンさん、これ片付けてしまいましょう!せっかくの暇な日です、ちゃっちゃか片付けてしまいましょう!!』

そして掃除が始まったのである。

掃除とは不思議なもので、片付ければ後から後から「ここも」「あそこも」と掃除してしまいたくなる。そう、俗にいう『なんとか・ハイ』。
そうしてるうちに執務室はすっかり大掃除の状態で、まれに今回のような書類が見つかるのだ。


(これ、絶対提出期限すぎてますよね・・・あぁ、なんて言おう)

胃がキリリと痛んだ気がした。


(それにしてもクザンさん、掃除だけはノリ気なんですね・・・。)

わくわくとゴミ山を開拓していくクザンの後ろ姿を思い出した。






そのころ執務室では、スズの思い描いた通りの光景が広がっていた。


「おお・・・これは無くしたと思ってた孫の手じゃないの」

「あ、こんなとこにあったのか。会議の招集状。」

「うわ、お茶菓子・・・?これもうだめだな。捨てよう。」

スズが留守中の執務室では、ヴィンテージものの品物がそこら中から掘り起こされていた。

「あれ・・・?カメラか、これ。懐かしいな。昔そういえば持ってたっけ」

いつも以上にせっせと作業をするクザンは埃のかぶった黒い掌サイズのカメラをみつけた。

「フィルムまだ残ってるけど・・・撮れるかねェ」

首をかしげながらも、カメラを『捨てずにおいておくもの』と書かれた箱にそっとそれを入れた。


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mokuji


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