私、明後日にモモンガ中将の下に戻ります」

いままでの話の流れから、クザンはそれとなくその言葉を読めていた。

「モモンガ中将、戻ってきたの?」

「はい、先ほど。
さすがにすぐいなくなるわけにはいきませんもの。スズさんにお別れくらいしたいでしょう?」

そのための明日という日。

「そっかァ、寂しくなるね」

「ふふ、ありがとうございます。そこで、快く明日を・・・いえ、明日を快く過ごすために、あなたにお願いがあるのですが」


バッ

「!!」

ミレディーが部屋のドアのそばに置いてあったダンボールを開けると、中にはたくさんの紙の束が。

「明日に片付ける予定だったお仕事ですわ」

「いつのまに・・・」

「あら、他の方に明日回収する予定のものをわざわざ今日、早く回していただいたのよ?」

「・・・これを、俺に今片付けろっていうのね」

「察しのいい男は好きですわ」

今日、スズと一緒にお茶ができなかったから。
明日は最後に、一緒にゆっくりとお茶を楽しみながら話をしたい。

「あーもう!仕方ない!」

「わたくしも微力ながらお手伝いします」

「久々に会えたあんたに免じて、ちゃっちゃと終わらせようか」

腕まくりをして、ダンボールから一気に書類を取り出した。


「あぁ、わたくし、先にスズさんを起こしてきますわ。あのままじゃ身体を痛めます」

「うん、頼むわ」








「スズさん、スズさん、そんなところで寝ていると変なクザンにいやらしいことをされてしまいますわ」

「・・・」

「スズさん」

「ん、」

大きく身をよじると、スズの目がうっすらと開く。
ミレディーは彼女に掛けていたブランケットをそっと撒くってやる。

「おはようございます。」

「ふぁ・・・、ミレディーさん」

眠気眼をしぱしぱと瞬く。
長いまつげがその度にゆらゆらと動いた。

「仕事はすべて終わりましたよ。」

「あ、お茶!そう、お茶でも・・・!私先に頂いてしまったんですが、どうですか!」

「申し訳ありません・・・。お心遣い大変うれしいのですが、わたくしこの後予定が入ってるの」

「そうですか・・・。では、明日に持ち越しですね!」

「はい、楽しみにしていますわ」

えへへ、と笑いあったのもつかの間。
部屋に掛けてある時計を見て、スズは目を見開いた。

「ここここんな時間まで私寝てたのですか!!」

「ええ、ぐっすりと。なので起こすのが申し訳なくて」

「うわわ、ごめんなさい・・・。もしかして待っててくださったんですか・・・」

(やらかした!)

スズは申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
なぜここまで眠りこけていたのか。
書類を各所へ持って行ったミレディーを放っておいてしまったことを心から悔んだ。

「ふふ、気になさらないで。ちょっとわたくしの仕事を片付けなくてはいけなかったので・・・。それより、今日は早く部屋に戻ったほうがよろしいですよ。お疲れでしょう?」

「・・・そうですね、ミレディーさんもこのあと用事がありますもんね。解散しましょうか!」

「明日のお茶、楽しみにしていますわ」

「はい、腕によりをかけて美味しく淹れさせていただきますよ!それでは、お疲れ様です」

「はい、おつかれさまです」


手を振ってミレディーはスズを見送った。





ぐぅ

「う・・・」

執務室を出てすぐにスズのお腹が鳴った。

(これは、先に食堂ですね・・・)

スズは閉まるぎりぎりで食堂に駆け込み、お腹を満たしてから自分の部屋へと帰った。


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mokuji


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