「さてクザン、あなたに聞きたいことがあります」
「なぁに」
ミレディーは場を仕切り直して、クザンに核心たる質問をぶつけた。
「あなた、スズさんの事は好きですの?」
「は?」
突然の質問に、クザンは思わず聞き返す。
「スズさんの事、好きですの?」
もう一度投げ掛けられる質問。
「・・・仕事できるし、可愛いし、いい子だとおもうよ」
「それだけ?」
「・・・」
「・・・」
ミレディーの突き刺さるような視線。 クザンは気まずそうに目を横にやった。
「まァ・・・好き、だねェ」
「・・・そう、」
「・・・恥ずかしいこと言わせるなよ・・・」
照れ隠しに顔を伏せて、頭を掻いた。
「・・・これでもね、スズちゃんのこと大事に思ってる、つもり」
「あなたらしい答えですね。まぁよしとしましょう」
「なによ、厳しいねェ」
「・・・例えるなら、50点。でもそれで勘弁してあげるのですから、感謝なさい?」
(大切にしてくれるなら、今はそれだけでいい)
まだ連れ添えるような関係じゃないけれど、気持ちの定まらないスズにはこれくらいが丁度かもしれない。 彼女の幸せを望むミレディーが出したた、現時点での考えうる最良の結論だった。
「あのね、クザン。もしスズさんのことを心から愛した時は、その時は絶対に彼女を守ってあげて。悲しくて泣いたりしなくていいように。」
嬉しくも寂しい、複雑な気持ち。
「わたくしも彼女のためにできることはしますわ。だけれど、わたくしにできなくてあなたにできることもあるの。だから、ね?」
本当の幸せを育めるのは男女の仲だけ。自分ができることはしれたものだ、と。
ミレディーの言葉はそのまま彼女の願いだった。 子供を託す母のような願い。
「? どうしたの、そんな」「男なら四の五の言わず、頷きなさいな」
「は、はい」
無理にそう誓わせたミレディー。しかし、スズを好くということ、愛することというのはそれを成すことである。 クザンもそれを理解している。
「・・・よかった」
普段はふらふらとしているけれど 軟派なようで相手を大事にできる (彼女のそばにいるのが、あなたでよかった)
(私の役目はもうここまでですわね・・・)
サカズキに心の中で詫びを入れた。
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mokuji |