二人の努力と実力で、日の暮れる頃にはもう片がついていた。
「後はこれをそっちの文書とまとめて、センゴク元帥のところへ持っていくのみです!」
書類用の封筒を机の引き出しからだし、それに先ほどサインした書類と分厚い関連文書を詰める。 その封筒に、そっと手が伸びてきた。
「では、これはわたくしが持って行きましょう」
スズの手から封筒を優しく奪うとミレディーはそれを脇に抱えた。
「悪いですよ!ミレディーさんにはさっきたくさん配り歩いて貰いましたから、私が行きます。ミレディーさんはもう上がってもらってでいいですよ?」
「大丈夫です。センゴク元帥に少しお話したいことがあるの。」
「そう、ですか?じゃあ・・・お願いしちゃいます!」
「はい、お願いされちゃいます」
二コリ、と微笑むとミレディーは扉から出て行った。
ミレディーを見送ったスズは彼女が戻ってきたときのために、お茶の準備を始めた。
「こんな疲れた時には楽しいお茶を入れちゃいましょう!」
彼女が取り出したのは『FANTASY』という名をつけられた茶葉。 缶を開けると、名前の通りの多彩でわくわくするような香りが漂う。
「・・・先に、一杯いただいてしまってもいいですかね?いいです、よね・・・?」
とても芳しい香りに我慢ならず、スズは自分の分だけ、少し先に淹れることにした。
「ふあ・・・!すごくいい香り!」
熱湯そ注ぐと湧きあがる湯気にのって辺りに香りが広がる。
うずうずする気持ちごとポットに蓋をして、2分の浸出時間をおく。
ささっと給湯室を片付けてから、ポットとカップを執務室のソファーの前に持っていくと丁度いい具合に時間が立っていた。
「では、いただきます」
ポットから注がれたお茶からは、茶葉のときに嗅いだものよりずっと香り高い不思議な甘い香り。
「普通の紅茶と変わらない色なのに、こんなフレーバーがするなんて・・・不思議ですよねえ・・・」
ふう、
蒸気で開いた豊かな香りに包まれながら、スズは深く一息をいれる。
そして、気づくとソファーに横になり、小さく寝息を立てていた。
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