15:想うゆえに蜂蜜色の豊かな髪が、持ち主の歩調に合わせて左右に揺れる。 何人もの海兵が、その美貌に振り向き立ち止まった。 「ご、ごくろうさまです!」 「あら、おつかれさま」 天女を思わせる慈愛の頬笑み。 その頬笑みを投げかけられた男たちは、舞いあがり、鼻歌を歌いだす者までいた。 「ブリュイ局長、お疲れ様です」 大きな扉の前で、白衣の男が彼女に深々と頭を下げる。 いかにもな理化学の雰囲気を纏う男だった。 「例の新薬の製造元は?」 出会い頭の問いかけ。 しかし男はその問いかけを予知していたように、持っていた資料をぱらぱらと捲る。 「は。やはり世界政府のパテントをとった業者のようです」 「やっぱりそうなの。あとで確認をとってみます。ありがとう」 「それと、報告を聞く限り、死者も何人か出たようです」 「・・・業者が注記を怠ったのでしょう。嫌になりますわ」 「致死の臨床結果は公にしがたいですからね」 「・・・わたくしは本部へ戻ります。またしばらく留守にしますが、後の事はよろしくお願いしますね」 「はい、いってらっしゃいませ」 白衣の男と、ブリュイと呼ばれた女はそこで別れた。 |