「私は・・・クザンさんが好きです。 けれどこれは、そういう好きじゃなくて・・・今、ミレディーさんに感じる感情と同じなんです」
「わたくしと同じ・・・」
「はい!」
にこっと笑ってしっかりとミレデイーに向き合った。 その顔は先ほどまで照れていたスズのものとは違っていた。
「私が、クザンさんに、ミレディーさんに抱く”好き”は、絶対幸せになってほしいとか、守り抜きたいとか・・・そういう感情・・・いえ、願いです。 そうですねえ・・・例えるならば大きな家族でしょうか。 私は大好きな人達とずっと一緒にいたいんです。 一緒に年をとって、一緒にご飯食べて。 同じ時間を共有できる喜びは、何ものにもかえられません!」
「スズさん・・・」
「私は、色恋が理解できません」
そう言って伏せた目から寂しい色がもれる。 彼女の青い瞳はまさに悲しみをあらわしていた。
「他人を自分のものにしたいだとか、たった一人を愛したいとか。 そんなの・・・できっこないのに」
(あ、そうか・・・この子は・・・)
きっと、誰もを愛してしまうから。
ミレディーはそれを可哀想だと思ってしまった。
(みんな平等に愛してしまうということは・・・ あなたお一人、孤独を得てしまうことなのに・・・)
ただ一人を愛するならば、その人だけの味方をすればよい。 しかし、誰もを愛することは誰にも味方をし、誰からも恨まれることを含む。
自虐の八方美人。 八方からの恨みを一身に受け、それでも相手を愛する。 それが平等に愛するということである。
「・・・」
ミレディーは何も語らずスズを抱きしめた。
「でもですね、ミレディーさんとクザンさんはその中でも断トツですよ。あとガープさんも」
ふふ、と抱きつくミレディーの肩に鼻をすりよせた。
「・・・ありがとうございます」
これはいかがしたものか、とミレディーは計画の変更を余儀なくさせられた。
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