蜂蜜色の髪


デュマ・ミレディー准将が期限付きの青雉の部下になった次の日。


「いやァ、ホント美人だよねェ」

「美しさが止まるところをしらないですよね」

ぽけー、と二人して呆けているのはクザンとスズ。

しかし二人は対照的だった。
呆けながらも手元はしっかり書類の整理と仕分けをしているスズ。
それに対し、クザンは自分の机に前のめりになりながらじーっとミレディーのほうを見ているだけであった。


「青雉さま、お仕事してください」

ミレディーは困ったような笑みを浮かべて青雉にそう言った。

「そうです、仕事してください!」

それに便乗するようにスズも言う。

クザンは二人の言葉から逃げるように机に顔をうつ伏せた。

「俺はのモットーは”だらけきった正義”なんだよ、だからほら、ダラダラし」「クザン!!!おるか!!!!」

ばたん!とドアの悲鳴ともいえるような音とともに真っ赤なスーツを身にまとった大男が部屋にはいってきた。
男の額には浮き出た青筋が浮かび、拳は人を絞め殺せるほどぎりぎりと握りしめられていた。
部屋にいた3人はみんなそろってドアのところに立つその男を凝視した。


「げ・・・サカズキ・・・」

「おんどりゃあ、あんな紙切れでわしの目をだませる思うたんか・・・!」

赤いスーツの大男、サカズキはずかずかとクザンに歩み寄ると彼の襟元をひっつかみ無理やり立ち上がらせた。


「どうどう。ちょっとみんな怖がってるでしょう?駄目じゃないの、大きな声だしちゃァ」

「そんなこたァどうでもいい!さっさとこい!!」

噴火しそうなサカズキの前なのに、いつもと何も変わらないへらりとした顔のクザン。
二人の周りにいるスズとミレディーは言葉もなく二人の様子をただうかがっていた。


サカズキは動く気配のないクザンを、掴んだ手をそのままに入ってきたドアのほうへと引きずっていく。
あの体格のクザンを易々と引きずるサカズキ。
やはり海軍大将。並の海兵とは積み上げてきた努力と訓練の差が違う。


「スズちゃーん・・・」

泣きごとのようにクザンはスズの名前を呼んだ。
サカズキも同時にスズのほうへ目をやった。

「あ、う・・お、お茶いれて待ってますね、いってらっしゃいです・・・」

サカズキの赤くたぎる目にビクつきながら右手を力なく振り、クザンを見送った。

「怖がらせてすまんな。」

「い、いえ・・・」

「・・・今度なにか詫びはいれちゃる」


「スズちゃーん・・・」


ばたん!

助けてくれと目で訴えかけるクザンを遮る形で扉が閉まった。



「こ、こわかった・・・怖かったよう・・・!」

スズはその音を合図に床へへたり込んだ。
サカズキと目が会った時から止まらない震え。


「(・・・)サクラ少将は赤犬さまが苦手なのですね」

「はい・・・」

すっかり血のひいてしまった手は冷たい。
それを知ってかミレディーは自分の手をスズの手にあてた。

「もう大丈夫ですよ」

「はい・・・」

暖かなミレディーの手にスズは心が休まる気がした。


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mokuji


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