「父は極度の心配性でございまして・・・。
わたくしが軍艦に乗ることに不安があるようなのです。
母が大型の客船の座礁で大けがをしたせいもあるかもしれませんね。」


スズと青雉が即座に「OK」をだしたので、あのままミレディはここにいる。
モモンガのところの少将が引き上げたので、スズと青雉、そしてミレディの3人になっていた。


「父は世界政府の官僚なので、わたくしの出兵の知らせを聞くと逐一『留守番』をするように、ここ、海軍本部に指示していて・・・。
いつもなら他の中将さんのところへお邪魔しているのですが、今回はどこもお忙しいらしく、青雉さまの元に来させていただいたのです。
お気軽になんでも仕事を言いつけてくださいね」

ミレディはそう言うとぺこり、と頭を下げた。

(本当に綺麗な人だなぁ・・・)

スズは海軍本部の中でも数少ない女性海兵であるミレディと一緒に仕事ができることへの期待を積もらせていた。

青雉も美人な部下が増えることへ喜んでいるふうに、スズには見えた。

「美人2人に囲まれて、俺ってすごい幸せ者だよねェ」

いつもよりニヤけた表情の青雉。
憶測が確信にかわった。


「私とミレディさんを一緒にしちゃだめですよ、クザンさん」

すでに冷めきってしまったさくらんぼの緑茶をすすりながらスズは言った。

「スズちゃんも充分綺麗なのに、」

同じように青雉も冷たいマグカップを片手に訂正を明示する。
それに乗るようにして熱いマグカップを持ったミレディが喋る。

「そうです。わたくしのような者より、スズさんのほうが素敵ですよ」


「! お、お世辞としていただいておきますねっ」


二つの褒め言葉に挟まれてスズは赤く照れた。

大きな変化はあったものの、いつものように青雉の執務室にゆったりと午後の時間が流れていく。

しかしスズの胸についた引っかき傷はスズが全く気づかないまま、化膿するときを待つように、じっと胸にありつづけた。


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mokuji


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