「クザンさん、報告・・・聞き逃しましたね?」

スズのジロリという視線が青雉に突き刺さる。

「そんなハズないんだけど・・・俺ずっといたし。
報告も全部一応覚え・・・あ。」

何か思い出したように、青雉が手をぽん、と叩いた。

「そうだ、古い書類を捨ててるときに混ざったかもしれねぇな」

「!! なんで!そんなずさんな・・・!」

「慣れないことしたのがアダになっちゃったねェ・・・」

「そんなことだからっ」



くすくす、


ドアのほうから遠慮がちに発せられる上品な笑い声。
それを聞いて二人は荒げていた声を静めた。
ミレディがスズと青雉のやり取りをみて笑っていたのだ。
蔑みでもなく、嘲笑うわけでもなく作られたその笑みに二人は惹かれた。


「おもしろい方たちですこと、ふふ」

「・・・お恥ずかしいです」

スズは顔を真っ赤な顔をうつ向かせた。
青雉はそんなことはなく、いつも通りの顔をしていた。

「ごめんね、用件なんだったか確認できる?」

青雉がモモンガ中将のところの少将に尋ねると、一度姿勢を正し、数日前に一度言ったであろうことをまた説明をしてくれた。


「こちらのデュマ・ミレディ准将を、モモンガ中将の海上演習中こちらの執務室に待機させる許可をいただきました。
つまり本日より5日間程度、しばらく青雉さまのもとでお世話いただきたい。


「え!」

即座に反応したのはスズだった。


(あれ?)


そして、無意識に発したその声の意味を理解できないでいた。


「わたくし、お邪魔でしょうか?」

「いえいえ!そんなこと全くありません」

少し陰りの見える笑みを向けられ、スズはぶんぶんと手を振って否定するした。
ただでもしんどい青雉の補佐の仕事。
人員が増えることは歓迎すべきことだ。
しかも、こんな綺麗な人が来てくれるというのに、何に文句があろうか。


(なんで一瞬不安になったんだろ)

スズにはまったく見当がつかなかった。
しかし、それにひっかかりはしたものの、その棘はすぐに抜け、無へと霧散した。


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mokuji


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