「・・・ねぇスズちゃん」
「はい、なんでしょうか」
正義と書かれたマグカップを片手に、向かいに座る青雉に目を向けると、青雉は何か複雑な目をしていた。
「どうかしましたか?コーヒー不味かった・・・ですか?」
「ううん。美味しいよ。」
「じゃあ・・・」
「・・・スズちゃん、遠征でずいぶん活躍してるらしいじゃないの」
青雉はそう言ってズズ、とコーヒーをすすった。
「そんなことないですよ。ガープ組の人たちがしっかり援護してくれているのです。」
「うん、そういうことじゃなくってね・・・」
青雉はスズの真新しい制服に目をやる。
「いっつも血まみれになってるって聞いたよ」
スズの胸がドキリ、と固まった。
「か、返り血がべったりとつくことが多くって」
「・・・自分の血じゃないって?」
「はい」
「はぁ・・・。 報告うけてるって言ったでしょう?スズちゃんが自分の体にナイフ刺して暴れまわってんの、俺ちゃんと知ってるんだからね?」
「うっ・・・」
青雉の言葉がぐさぐさと固まったままの胸に突き刺さる。
「そういうの・・・良くないよ。女の子なんだから。」
「でもっ」「でも、じゃない」
青雉がスズの言葉を遮る。
「一応、今は俺の部下なのよ、スズちゃんは。 部下が自虐して戦ってんの見たくないの当たり前でしょう?」
スズは自分をコビーやヘルメッポに置き換えて考えた。
(そんなの・・・耐えられない・・・)
下を俯いたスズに、青雉はさらにつづける。
「それにね、遠征のこととかもっと俺に話してよ」
「?」
「人から、スズちゃんがそんな戦い方してるって聞いて心配すんのって、悲しいでしょうに」
「・・・ごめんなさい」
「心配かけないってのも大事だけどさ、俺にもっと心配させてよ」
青雉の大きな手でスズの頭はわしわしとなでられた。
「・・・わかった?」
「はい!申し訳ありませんでした!」
「よろしい」
青雉は飲み終わったカップを机に置くと、またソファにごろりと横になり、アイマスクを目まで降ろした。
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mokuji |