女はまた戦場にいた。

いつものライフルとカトラスは今日は所持していない。

代わりにたくさんのダガーナイフを孕んだベルトのようなものを腰と両太ももに撒きつけていた。


「投降してください」

女が海賊の船長に申しでると、足元にペッと唾を吐きかけられた。

「はっ。誰がお前の言うことを易々と聞き入れるんだよ。馬鹿かお前!」

ゲラゲラという下卑た笑いに女は包まれる。


「口で言ってもダメなら、実力行使しかないですね。
あいにく、手加減というものは苦手なので」


女はベルトからダガーナイフを両手合わせて6本、指の間に掴み取る。


「死にたくなければ大人しくしててください」


海賊たちはそのダガーナイフでくるであろう攻撃に備えて身構えていたが、女の行動は彼らの予想の遥か外だった。


ざしゅ、という切れのいい音が女の体から発せられる。


「「?」」


海賊たちは状況が理解できず目が点になった。

目の前で自分たちを捕まえに来た女が自らの体にナイフを突き立てている。

しかし痛がるふうでもなく、顔には天使のような朗らかな笑み。

そしてその天使は仕上げと言わんばかりに、自らの足の腱をスパンと絶った。


「おまえ、何してんだ」

血にまみれていく痛々しい姿に動揺をかくせない海賊たち。


女は掛けられた声に応えるように、腕を左右に開いた。


そして辺りに叫び声が木霊した。


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mokuji


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