雉、襲来



 飲み物を取りに行こうと部屋のドアを開けると、なぜだか海軍大将・青キジがいた。
「やァ、ルッチ。」
 珍しくキチッとした黒のタキシードを着て俺じゃ敵いもしないような年相応の色香を漂わせている。
「どうも。何しに来たんです?」
「ん?ちょっと近くまで来たから・・・」

 ・・・まずい。

 俺はすぐさまドア開けたままのドアを閉めようとしたが、遅かった。

「青キジさん!」
「やァ、スズ。」
「お久しぶりです。今日はえらく恰好がいいですね。」

 あああ・・・寄るな寄るな、抱きつくな。

 俺の部屋で、俺の隣でうとうとしていたはずのスズが今は青キジの懐にすり寄っている。
 青キジは青キジでスズの髪を一房手にとってはその匂いを嗅いでいる。変態臭いことしやがってからに。

「スズはいつも可愛いねェ。」
「嬉しい!」

 俺は見ていられず青キジに尻尾を振る彼女の腕をつかんで引き離した。
「そう引っ付いて騒いでたら迷惑だろう。こっちにこい。」
「・・・ごめんなさい。」

 しゅん、として謝るスズをそのまま部屋に放り込んで、次こそしっかりドアを閉めた。

「いいじゃない。たまの事なんだし。」
「変に手垢をつけられると仕事に支障が出ますのでほどほどにして頂きたい。」
「それ君のことじゃないの?」
「・・・。」
「・・・。」
 暫しの睨み合い。

「・・・やめたやめた。噛みつかれたくない。」
「・・・。」
 本当にその喉元に噛みついてやろうか。肉食獣の血が疼いた。
「これは仕事だルッチ。スズを2、3日借りるよ。はい、海軍本部からの要請の紙。」
 青キジは角が揃えずだらしなく折られた紙をポケットから出すと俺に見せた。・・・どうやら本物らしい。紙の下部にセンゴク元帥の判が押してあった。
「ま、この印は俺が勝手に押したんだけど。」

 海軍はなんでこんな奴の尻をてっぺんに乗っけてんだよ。


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[ 9/12 ]
mokuji

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