ことのは



「言葉は嘘でもなんでも、吐いた瞬間に呪いになる。」

 ばつん、という音が耳のそばで聞こえた。

「っ...たい!」
「呪いなんてものは被るものじゃない、纏え。」
 ぞわりと耳に這い寄る声が聞こえ、耳たぶの肉から血の珠が転がり落ちる。
 きついアルコールの臭いのするガーゼがそこへ押し当てられた。感覚の薄いはずの耳たぶに、内部から溶かされていくような強い痛みが襲う。手の甲を噛んでみるが気休めにもならない。
 ちかちかと点滅する視界がじきに滲み始める。
「お前を抱く人間は、みんな利用しろ。」

 噛んで真っ赤になった手を退けて、ルッチはスズの瞼にキスを落とした。咄嗟に閉じた目からは涙がこぼれた。
「ルッチ...痛いよ。」
「そのうち慣れる。」
 そのあと、もう片方の耳にも穴が開いた。


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mokuji

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