聞かざる言わざる



 流石は金持ちの用意したスイートルームだ。バスルームがプールのように大きい。だけれど、
「あいつの部屋のほうが広かっただろう」
「あぁッ・・」

 先ほどまで着ていた黒のカクテルドレスに隠れていた腹をそっと撫でる。感触ではわかるはずもないが、上からのぞいて見ると赤い痕がたくさんあった。あの薄らハゲにだいぶ可愛がられてきたらしい。嫌な臭いが映っていたのにも納得できた。
 先ほど綺麗に『洗ってあげた』のでいまでは石鹸のよい香りがする。


 体格差のため、ぬいぐるみを抱くような恰好でスズを後ろから抱きしめる。
こんなに広い浴槽なのだから泳ぐなりなんなりできるのだけれど、こんなにいい女をほったらかして子供みたいなことできるほど腑抜けてはいない。

「ふ、・・・ぁん」
 俺に胸と背中を愛撫されながら、スズは脚の間にある俺の硬くなった欲望の塊を指でぐりぐりといじっている。無意識に押し付けられる肉のヒダに無理やり押し込んでしまいたくなるのを抑える。

 焦らして焦らして、うんと焦らして。頭がショートするくらいの欲に溺れて仕事のことなど忘れてしまえばいい。

 胸を触っていた手を彼女の手に添えて、俺のモノを握らせる。オナニーをするように彼女の手で擦り上げていると、スズは興味深そうにその様子を眺めた。
「どうしたの?」
「・・・クザンさんってやっぱり大きかったんですね。」
 真顔でそんなことを言うものだから動かしていた手を止める。
「・・・それは早く入れてっていう催促?」
「・・・少し。」
 少し?
 イエスかノーかの2択で答えられる質問に程度を答えるなんて。

 まあでも、早くスズの悦ぶ顔も見たいので彼女の尻を持ち上げた。

「うっ・・・あん・・・っ」
 先ほど彼女自身が大きいと褒めたソレを膣いっぱいに咥えながらスズは甘い声を漏らす。

”あいつとどっちがいい?”

 喉まで出かかった野暮な質問をクザンは発することなく飲み込んだ。あいつとはもちろん四六時中彼女にひっついているルッチのことだ。あいつのせいでこういった用事でもなければ彼女に触れることも容易ではない。
 スズが待てない、とばかりに腰を揺らつかせるのでせっかく入れたモノを抜き取り、彼女を浴槽の縁を持たせてから尻をこちらに向かせた。そしてご希望通り彼女の中をガチガチに固くなったソレで突いてやる。厭らしく肉と肉が絡み合う。

「ひゃ・・・んっ、クザンさん、好き・・・大好きッ・・」


 いつものことながら・・・。

 このまま彼女に首輪でもつけてどこかへ逃げてしまいたくなる。・・・叶うはずがない。
 政府の、それもインビジブルな9番目の犬として世界の裏で暗躍する彼女が仕事を捨てることは死ぬも同じだ。いまさら表で一般人のように生きる事なんてできるわけもない。CP9はそんなイキモノなのだ。
 そもそもCP9が逃げたしたとなれば追うのは海軍だ。サカズキやボルサリーノが追ってくると思うとゾッとする。

「そういう言葉は愛した男にしか言っちゃァいけないんだ。」
 ガブリ、と肩の肉を噛んでそこに滲む血を舐めとる。

「あぁっ・・・! わ、たし。んっ・・・ク、クザンさんのこと、」
「言葉だけもらっとく。」

 鵜呑みにして痛い目見るのは俺だ。

 俺に会う時だけ外す指輪とか、必ずつけてくる俺が好きだと言った香水の香りだとか、ルッチの名前を出すと困ったように笑う顔だとか。
 全部、仕事のターゲットを惑わすのと変わらない。もしくは気のせい・・・と、思っててあげる。

 酔っ払いのうわごとなんだろう。
 所詮、掴まえてはいけない青い鳥なんだろう。

「クザ、さんっ・・・クザンさんッ」
 
何度も何度も名前を呼ばれ、彼女が達した後、自分も欲を吐き出し小さく聞こえないくらいの声で呟いた。

「惚れた女を死なせたくなんてない」


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[ 12/12 ]
mokuji

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