変に酒がまわってしまいクザンに背負われて部屋に帰ってきてから1時間。スズの体調はずいぶんよくなった。 すっかりくつろぎムードのクザンとスズは部屋で寝転がって畳の心地よさを満喫していた。
「お。」 ふと机のほうへ目を向けると寝ている間にクザンが買ってきたのだろうか、机の上に美味しそうな桃のカクテルが置いてあった。 「お風呂上りに飲もうかな。」 スズはむくりと起き上りそのカクテルの瓶を掴むと部屋に備え付けの冷蔵庫を開けて中の棚へそっと置いた。 「すごく美味しそう。楽しみだなあ。」 先ほど酒風呂でダウンしたことなど覚えてないかのような言葉を漏らしてから、スズはるんるんとクザンの上に圧し掛かった。 「ん?」 寝転がってうとうととしていたクザンはアイマスクを上げ彼のお腹に上半身を乗せているスズを見た。 「机のお酒。冷蔵庫に入れちゃいました。あれ、クザンさんが?」 「ああ。そう、酒風呂の帰りに見つけてね。今日飲めなくてもお土産にすればいいかと思って。」 「わあ!嬉しいです!」 スズはごろごろと猫のようにクザンの腹へ頬を摺り寄せた。クザンはその様子に頬を緩ませて手を伸ばす。彼女のやわらかい髪をくしゃりと撫でると本当にそこに猫がいるようだ。このずいぶんと自分に懐いている大きな猫をどうしてやろうかと眺めていると彼女は「よいしょ」とクザンから体を離した。 「お酒がいい具合に冷えるまで、私お風呂に入ってきます。」 またはいるのか。 クザンの頭に「残念」の2文字。 「またのぼせて倒れても知らないよ。」 惜しい仕打ちを食らったお返しにそう言うとスズはクルリと体ごと振り返り「その時はまたクザンさんが助けてくれるでしょう?」と悪戯に微笑んだ。
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