スズとクザンが共に風呂からあがって炬燵で和んでいると仲居達が部屋に食事を持ってきた。
「わー!お刺身です、お刺身!美味しそう・・・!」
海軍本部の食堂生活を送っているスズには、なかなか食せないものの一つにお刺身があった。 たまにマリンフォードの町へ出かけても甘いものを買い求めてしまうためである。
「本日近海で獲れたものをさばいています。新鮮ですよ」
「綺麗な色ですねえ」
順々に炬燵へと運ばれてくる皿には、色とりどりの料理。 虹のように多彩でそれなのに目に痛くないその色は、空いたお腹を駆り立てる。
「では、ごゆっくり」
すべての皿を並べ終え、仲居達は部屋を出て行った。
「いただこうか」
「はい、いただきましょう」
いただきます、と二人して手を合わせた。
スズは真っ先に白身の魚に手を伸ばす。 丁度いい薄さに切られたそれは半透明で醤油を浸すとじんわりと赤みを帯びた黒に染まった。
ぱくん
スズは躊躇わず、一口で食べた。 口に魚の繊細な甘みが広がる。
「美味しい?」
刺身を口に含んで固まっているスズに、クザンが声をかける。
「っ! こんなに美味しいものだったんですね!お刺身って!」
「うん、良かったね」
「次はこっちを」
一口一口、料理を口に運ぶ度にはしゃぐスズを見ていると自分も楽しくなる。
(いつも以上にキラキラしちゃって)
クザンはそんなスズを見ながら自分も料理を口へと運ぶ。
(ん、うまい)
スズがこれだけ騒ぐだけはあるなァ、と実感した。
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mokuji |