バシャーン
「クザンさん、猿が!猿がいます!!」
「へェ」
「雪の中寒くないんでしょうかねー!」
「そうねェ」
わいわいきゃっきゃと外から賑やかな声がする。女性特有の、いくら聞いてて飽きの来ないコロリコロリと丸い声。 壁一つ挟んだ向こうで、スズは露天風呂を楽しんでいた。
「湯加減どう?」
「最高です!」
「良かったねェ」
弾むスズの声とは対照的に、クザンの声は言葉をどこかへ放り投げるように愛想がなかった。
(これは・・・怒ってらっしゃる・・・?)
「・・・すいません、先にお風呂頂いちゃって・・・。あ、今すぐ出ます!だからクザンさんどうぞ!」
スズは気を使ってザバッと湯から身体を持ち上げる。 クザンはきっと一番にお風呂に入りたかったのだ、とスズは自身に叱咤した。
(うっ・・・)
濡れた肌に凍えるような空気が刺さる。
冷え切ってしまわないように、と露天風呂から早々と撤退しようとするスズの気配を察して、クザンが申し訳なさそうに言葉をかけた。
「いや、先に入られて機嫌悪いわけじゃないよ。」
さすがにそんな大人気ないことしないから、と付け足す。
「? じゃあどうしたんですか・・・?」
ちゃぷん、と湯船に再び身体を沈めながらスズは問いかけた。
「・・・内緒」
「えー!」
ザバーン!
スズが立ちあがった勢いで、湯も勢いよく溢れる。
「こらこら。あんまり暴れないの。」
「すいません・・・」
スズは顎のところまで浸かりなおす。
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mokuji |