「あ、う...」
 ついばむように甘く噛まれてはそれを癒すように舐められて。
 スズの胸の頂はすっかりクザンの唾液でべっとりとしている。胸への刺激の間にもクザンは下腹を焦らすように撫でては肝心なところに触れようとしない。
 それでもじわりじわりとにじみ寄る快感の波に身体は流され神経はふわりと浮かぶ。スズは疼きを我慢するために両膝を擦り合わせた。
「触ってほしいの?」
 クザンは下腹を撫でまわしていた手を、足の付け根、柔らかな肉が盛りあがったそこへ差し入れる。
「ッ....」
 ぴくり、と肩を震わせて動きを止めて固まったスズ。クザンがその顔を覗き込む。
「ほら、言わないとわからないなァ。」
「.....。」
 む、と眉間に皺を寄せてスズはクザンを睨んだが、全く効き目はない。
(かわいい....。)
 すっかり潤んだ目をしたスズにどれだけ威嚇されようとクザンから見ればただ見つめられてるも同じ。むしろ火に油もいいところ。
 くい、と口角をつり上げて不敵に微笑んでから彼女の口にキスをした。頬骨のあたりを親指で撫でてやれば、ゆるゆると眉間の皺はほどけ、先ほどまでのとろんとした表情に戻る。
「ん....」
 息が苦しくなってきたスズはクザンの胸を押して「離して」と無言の合図を送る。しかしクザンは離れることなく、唇は引っ付いたままだ。
(くるしい...!)
 陸上で溺れてたまるものか、と精一杯顔を背けてほんの少しの隙間を作りそこから新しい空気を吸い込む。
「っは...は、あ...」
 まだしつこく追いかけてくるクザンの唇をよけながら、なんとか肺に空気が満たした。これで大丈夫。
 スズが「もう大丈夫」といった顔でクザンの目を見ると相手は何やら意地悪そうな目をしているではないか。
(まずい。)
 気付いたときには間に合わず、かぶり付くように口づけられてポカリと開いた唇の間から舌をねじ込まれた。
「むッ...ん、んー!」
 ぱしんぱしん、と肩を叩いてもクザンは止まる事なく、抑え込まれた頭はもう微動だにできなさそう。
 細められた舌先で歯の根元をなぞっていたかと思えば舌を絡め取られて独特のざらついた触感でたっぷりと舐られる。
 たまにクザンが口を動かしたときにできる隙間から酸素を吸入するが間に合わない。
 肺胞が次の酸素を欲する感覚にめまいがする。
(死んでしまう!)
 生理的にぽろぽろと涙が出てきては頬を伝い桧の床板に流れ落ちていった。
 その様子を見てクザンはようやくスズの口を解放する。
「っはあ、はあ、」
 跳ねる肩に頭に上っていく血液。ぴくり、とたまに体を震わせながら真っ赤な顔で息を整えるスズをクザンは上から見下ろした。
「すまんすまん。つい。」
 にやにやした顔でそう言い放つ彼がちっとも懲りていないことなど分かりきっている。
「鼻で息すりゃいいのに。」
(そんなはしたない事できますか!)
 息をするのに必死で、噛みつく言葉をあまんじて飲み込んだ。


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mokuji

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