「なんで・・・なんでこんな・・・」

スズは酒風呂につかりながらわなわなと震える。


「混浴だなんて聞いてないです!!」

辺り一帯に彼女の悲痛な声が響いた。



「確かに言った覚えはないけど、大体見当ついてると思ってたよ」

クザンは酒風呂に浸かりながら、未だ脱衣所から出てこようとしないスズにそう言った。
いつものアイマスクの代わりのように、頭にはタオルが乗っている。


「クザンさん出たら入ります!」

「今更裸なんか・・・。おいで、気持ちいいよ」

(う、ぐ・・・)

脱衣所のドアにへばりついているスズの鼻には次々と芳しいお酒の匂いが舞い込んでくる。


(今すぐにだって入りたい・・・)

彼が、クザンがいなければ・・・!

スズは頭をかかえた。一緒に風呂だなんて、恥ずかしくて彼女にとってとても入れたもんではなかった。

しかし残酷にも、浴場からは「ふう」というクザンの心底心地よさそうな声が聞こえる。


(入っちゃおうかな・・・タオルで隠せば、大丈夫だよね)


脱衣場の一角に積まれたバスタオルを掴むと胸とそこから下が見えないように当て、身体に巻き付けた。


(・・・うそ、長さ足りない!!)

これではしっかり隠せない。スズは床に崩れるように落胆した。


そこにクザンから鶴の一声がかかる。

「お酒もあるよ」

「!」

ガラリ、

スズは立ち上がると浴場への扉を少し開けた。

「お酒・・・?」

「うん、しかもここの地酒」


スズは覚悟を決めた。


「今すぐ入りますから飲まないで待っててくださいね!」

先程のバスタオルの上部を胸に当てて前を申し訳程度に隠し、スズは浴場に乗り込んだ。


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mokuji

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