クザンはスズの上から一旦退き、彼女を後ろから抱き直した。
「開けていい?」 「どうぞ」
スズがじっと見つめる前でクザンは包みのリボンを解いた。
「ん・・・?」
包みの中から全く予期してなかったものが姿を現した。
『肩たたき券』
父の日や母の日なんかに何度か話に聞いたことがあるその品物。 それが今、クザンの目の前にあった。
「えーっと、これは・・・」 「? 肩たたき券ですよ?」
何か変ですか、とでも言いたげに見上げるスズに何と言ったものかと悩むクザン。
「前に、クザンさんに聞いたじゃないですか。『何か今欲しいものはありますか』って」
「(・・・そういえばそんな事あったなァ)あれはこの日の伏兵だったのか」
確かに結構前だが、スズにそんなことを聞かれた覚えがあった。
「クザンさん、お休みと肩たたき券が欲しいって言ってたので・・・」
だから温泉旅行と肩たたき券を。
なるほど、とクザンは納得した。
「それにしても、すっごい立派・・・」
子供が手作りする肩たたき券とは一線を画すスズ特製の肩たたき券。 本の背のようにしっかり綴られた50枚はあるであろう肩たたき券は、一枚一枚綺麗に切り離すことのできる仕様だ。 しかも券の縁には紙幣の様な光沢の加工がしてある。
「業者の方に頼んじゃいました」
ふふ、と照れるように笑うスズ。
(もう、本当にこの子は・・・)
クザンの願いを切実に叶えようとしたスズを、彼はとても愛らしく思った。
「ん?これは?」
「あ、それはオマケですよー」
クザンは肩たたき券の下の包みに気がついた。
「肩たたき券だけでは味気ないかなあと思ったので」
開けると、それはアイマスクだった。
「これならクザンさんいつでも使えるでしょう?」
「・・・うん、なんか安心した」
「?」
「なんでもないよ」
そう言って、クザンは自分の顔の下でハテナを浮かべるスズの頭に擦り寄った。
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mokuji |