この6人で入れるであろう炬燵の机。そこに乗りきらないほどの料理も、二人にかかればペロリと平らげられた。


「ふう・・・一生分のお魚を食べた気分です」

「そこまでは食べてないけど、わかるなァ。そんな気分だね」

胃の充実感を堪能しつつ、のんびりと食後の日本茶を楽しむ。
ぬくぬくとした足元がさらに幸福感を与えた。


「俺、ここに住みたいなァ」

「本部はクザンさんにとっては仕事地獄ですものね」

「そうだ。執務室を全面畳にして炬燵置こうか」

「それは素敵です。全資金をそちらに回すように手配しましょう」

「さすがスズちゃん。ま、センゴクさんが許してくれねェわな」

「ですね」

「ねー」

ずず、とお茶をすすって「ほう」と息をつく。



「ん、」

スズが唐突に炬燵から抜け出した。
何をするのか、とぼーっと眺めるクザンの傍の障子に近寄ると静かに開いた。

「やっぱり」

「どうしたの?」

クザンがスズの肩に顎を乗せて窓のそとを覗いた。

「雪が降って来たんです」

「ほんとだ。綺麗だねェ」

「雪って降る時に音がするんですよ」

「そうなの?」

雪の降るところは今まで飽きるほど見てきたが、音なんて聞いたことがないないクザン。
耳を澄ませてみると、確かにシンシンと音が聞こえる。
周りの音をすべて吸収し、静かな中で沸くように聞こえる音。あぁこれが初めて聞く雪の音か、とクザンは思った。

「降る前は空が霞んでゴウと聞こえるんですよ。それを合図に、私たちは家に帰るんです。」

「そっか、スズちゃんノースブルー出身だから雪とは親しいんだな」

「はい。子供は雪の降っている間、部屋の中でやることもなく雪の音に耳を澄ますんですよ。」

灰色の空に白い雪が舞う。
それを窓から眺めつつ雪降りが止まったら何をしようか。そうやって静かに過ごしていた昔がスズの頭の中でよみがえる。


「ノースブルーといっても雪がたくさん降るのは一部の地域ですけどね」

「そうなの」

「逆に私のいたとこよりもっと降る地域もあったみたいですが」

「・・・どうせなら雪が降ってる中、露天風呂を楽しみたいでしょ?」

「? はい、それはもちろん」

「お風呂行く準備しなさいな。」

「え?あ、はい。わかりました・・・?」


障子のところから離れるとよく分からないまま手持ちの荷物からタオルやらを取り出す。


「さっき言ってた酒風呂、露天風呂みたいだよ」

「!! なんと!」


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mokuji

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