ごそごそと洋服をあさり、なるべく大きめのTシャツとゆったりしてそうなズボンを探す。下着はいくら洗っていたとしても乙犬が一回は履いた下着かと思うと履く気気になれずこの際もうノーパンでいい!とやけくそになり発掘したTシャツとズボンを掴む。

 拝借した服をはやく着て脱出だ、そう思った時に玄関がガチャと開いたような音か聞こえびくっと身体が震える。尻尾も垂直にぴんと伸びぶわっと膨らみ、人型になっても尻尾や耳はちゃんと心情とリンクして動くらしい。

 パタンと控えめに扉が閉まる音が聞こたので、乙犬が点呼を終えて帰って来たのは間違いないだろう。
 何処かに隠れた方がいいと思ったが、今いる部屋は奥にあり隠れてもただの袋小路で意味がないんじゃとぐるぐる思考は巡りどうしようどうしようとしている間にこちらに足音が近付いてくる。
 咄嗟にTシャツだけばっと着た瞬間寝室へと来た乙犬と視線がかちあった。

「……………………猫実?」

「や、あの、これは……………その…」

 上から下まで余すことなくじろりと見られてるのが痛いほどわかる。自分の髪とおんなじ色をしたぴょこんとした耳と尻尾が生えているのだ。頭のいい乙犬にはなぜここに俺がいるのか、仔猫の正体が誰だったのかわかっているんじゃないのかと思う。

「似てるって思ったらそういうことか」

 ぼそりと小さく乙犬が呟く。多分人間の聴力だったら聞こえてなかったであろう声量だった。

「え?」

「なんでもない、ってか猫実本当に毛の色素薄かったんだな」

 一瞬何を言われているのかわからなかった。
 乙犬の視線を辿るとTシャツの裾と肌の境目辺りを見ていて慌ててTシャツを下に無理やり引っ張る。
 またたびのせいであろう反応して緩く勃ちっぱなしの自身と薄く生えている恥毛をまじまじと見られていた。なるべく大きめのTシャツをと探していたがあまり大きくなかったらしい。そして慌てて着た為に丁度隠れるか隠れないかくらいだった事に気付いてなかった。

「死ね!!!」

 どこ見てるんだと、怒りやら恥ずかしさやらで手に持っていたズボンをつい乙犬に投げつけるが乙犬は何事もないかのようにキャッチした。
 あと、5分早く行動出来てたら。後悔ばかりが募る。ここまできたら誤魔化せない。とりあえずどうにか状況説明をして自分の寮部屋に帰らせて貰おう。

「これって本物なのか?」

 乙犬は俺との距離をいつの間に縮めており頭から生えている耳を突然そっと触り、そのままその手は下へ向かい尻尾の付け根部分から先っぽへと滑らせる。

「っ……ひっ…………まて、い、今触るのは駄目だって」

「今じゃなかったら良いのか?」

 人の揚げ足をとって、尻尾を撫でられびくりと反応する俺を見てくつくつ笑っている。こいつもしかして性格悪かったりするのか?

 突然猫の良いところ尾と臀部を撫でられくたりと力が抜けて乙犬に身体を預けるような形になってしまった事をいいことに、乙犬の行動は俺の意思と反して尻尾を撫でていた手が今度は前に伸びて下肢を撫でた。そのまま乙犬の大きなてのひらが性器を包んだ事に怯む。

「ちょ、乙犬っ……悪ふざけも大概にしろって」

「このままも可哀想かと思って」

 ゆるゆる手を動かされ、裏筋や先端を指のさきで撫でられるとまたたびのせいもあって嫌というほど身体は反応してしまう。緩く勃ちあがっていた性器は完全に勃ちあがり先端からつつと先走りが溢れる。

「ひっ……も、元はと言えばお前のせいだろ」

「なんで俺のせいなんだ?帰ってきたら半裸で発情してたのは猫実だろう?」

 さっきから好きに弄られ先走りのせいか聞きたくもない卑猥な水音が勝手に耳に入ってきていたたまれない。

「うっ、ん……ま、またたび……お前が……」

「あぁ、そういえば。でもまだ生後3ヶ月でまたたびに反応すると思ってなかったからな。あと全然つめとぎに興味持ってなかったからこれがきっかけでつめとぎに興味もったらと思ってやっただけなんだが、悪かったな」

「っ……わかったなら…………離せよ」

「いや、俺のせいなら尚更最後まで責任もって対応しないとだろ」

 なにが責任もってだ?と思いながらも、乙犬がさっきより性器をしごくの手を早めてきて強い快感にびくんと身体がはねた。

「あっ…………や……出るからっ」

「いいよ、出して」

「やっ……くっ………んん───っ」

 ぱたぱたと床に何か落ちる音がして乙犬に簡単にイかされた事が鮮明にわかり、またたびで火照って赤くなっていた頬が更に赤くなった気がした。

「まだ元気だな」

 くすりと笑いながら乙犬にそう言われ自身を見れば簡単にイかされた自身がまだゆるく勃ち上がっていた事に驚く。

 これ以上は本当に冗談じゃないと身体を捻って逃れようとするが、さっきと同様で力が入らず逃げようにも逃げられず本気でヤバいと焦っていたら更なる悲劇が舞い降りた。
 どろっとしてひやりとした液体がけつに!けつに!この先の嫌な予感に乙犬を見るとそれはそれは楽しそうな笑みを浮かべていて恐怖が増した。

 いつの間にか乙犬の手は俺の性器から手は離れていたが、ローションのボトルを片手にもう片方の手は後孔を撫でるようにさわりと後孔をほぐそう触れていた。くすぐったいようなむず痒いような気分に陥りかけていたらそろりと指が侵入してきた。助けて神様!!!

「痛くないか?」

 何が痛くないか?だ!けつの穴より心のほうが遥かに痛い。
 乙犬がつけたたっぷりのローションと優しく?気を使って?尻の中を解されてけつは痛くはないが異物感は拭えない。何指が入っているかなんて考えたくないが乙犬の指がゆっくりと出し入れされてこれが夢だったらどんなに良かったかと思わずにいられない。

 身動きの取れない俺はされるがまま尻の穴を乙犬に好き放題弄られていた。1本だった指が2本になり3本になりと乙犬によって違和感を感じつつも慣らされていく事に恐怖を感じた。これは乙犬の指じゃない。むしろ尻になんか、なにも入ってない。そんな現実逃避が出来るまでは良かった。乙犬がある一点を見つけるまでは。

「ひっ、んんっ────」

 乙犬がある場所を触った瞬間変な声が出そうになり必死に口を閉じてやり過ごそうとしたが、それでも塞ぎきれない声が微かに漏れる。

 ここかと乙犬がぼそりと呟いたかと思えば執拗にその場所を弄り始めると、自分でさえ信じられないような甲高く気持ち悪い嬌声は口を閉じるだけでは抑えるのが無理でぎゅっと唇を噛み締めた。
 それに気付いた乙犬は俺の中に侵入していない方の手で唇を開けようとするが、それに頭を振る。

「……唇が傷付くから」

 なんて言われてもそれどころではない。唇が切れようが切れまいがそんな事、変な声が聞こえるより数億倍ましで。こんなみっともない声紡ぎたくないし、聞きたくないし、聞かれたくねぇんだよ!

 頑なに唇を開けるのを拒んでいたらいつの間にか乙犬の顔が近くにあり気付いたら唇を奪われていた。その衝撃につい唇の閉ざしが緩みそれを逆手に取った乙犬は躊躇なく舌を侵入させてくる。
 何が嬉しくて男とキスをしているのかと、しかもディープ。乙犬の舌を噛んでやろうかと思いながらもそんな事をしたら何をし返されるかという恐怖で結局されるがままだ。

 上の口も下の口も好き放題にされ、さっきイッたばっかりの愚息からだらだら先走りが垂れているイコール感じてるということが乙犬にばればれなのが羞恥を煽るし、悔しいことに乙犬からのキスがだんだん心地よくなって、いつの間にか下の指の異物感が拭われるなんて事があってはいけないのにいやらしい水音とともに乙犬の指を受け入れている事実にキャパオーバー一歩手前。

 味をしめたように何度も何度も繰り返される口付けが優しくてどうしてだか涙がこぼれた。堰が切れたように一度こぼれた始めた涙はぼろぼろと落ちて止まらない。泣き始めた俺に気付いた乙犬は動揺したようだった。自分でも泣くなんて思ってなかったしきっと乙犬だってそう思ってただろう。

「悪い、そんなに嫌がると思わなかった」

 気まずそうな顔をしてはいるが乙犬のその言葉にかちんときて火がついた。

「俺に嫌がらせして楽しかったか?俺の事が嫌いだからってしていい事と悪い事があるだろ」

 未だに止まらない涙をこぼしながら乙犬を睨み付ける。その言葉を聞いて乙犬は溜め息をつく。溜め息をつきたいのはこっちだと更に怒りが募る。

「嫌がらせじゃなくて、俺は猫実の事好きだから本当に楽にしてやろうと思って」

「は?」

 オレネコザネノコトスキダケド。聞き間違いか?言っている事がいまいちわからない。そうだ、聞き間違いに違いない。そんなことあってたまるか。



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