3.5


※小スカ描写があります。3話の夜から朝の抜かした部分の朝の騒動です。苦手な方はページを飛ばして下さい。飛ばしても話に影響はありません。



 ぴちち、ちゅんちゅんそんな鳥の鳴き声で目が覚める。外はうっすら明るくなっている位で起きるにはまだ少し早い。
 人間の時だったら閉めきった部屋で外で鳴いている鳥の鳴き声なんかで目が覚める事はほぼほぼなかっただろう。さすが猫の聴力。
 ふかふかのベッドの上にいつの間にいるということは昨日膝の上で寝た俺を乙犬は此処まで運んだのだろう。
 すぐ側にいる乙犬を見ればすーっと静かな寝息を立てている。寝ていてもイケメンだなんてやっぱり滅せよと寝起きの頭で思う。
 ぼやぼやとまだ眠いと薄く開いた瞳を閉じもう一眠りしようと丸って寝る体勢に入ろうと思った時にぶるっと身体が震えた。………といれ。

 そういえばよくよく思えば昨日ここへ来た時からトイレに1度も行っていない。乙犬は今寝ているし猫とはいえ中身は人間だ。乙犬のいる前でトイレをするのは恥ずかしいし、今乙犬は寝ているという事はトイレを済ませるは絶好のチャンスなのではないだろうか。
 乙犬を起こさないように、右の後ろ足にも気を使ってそろりとベッドから降りる。
 確かペットショップで猫砂は処理に困るからとペットシーツを買っていたのを見た。
 本当ならトイレでしたいがそんな事はこの猫の身体では無理なのはわかっている。本当はこんなの恥ずかしくて死ぬ程嫌だが妥協するしかないのが辛い。
 当然寝室にもペットシーツがあると思ってうろうろとペットシーツを探すが何処にもない。リビングには確かに敷いてあった。ここにペットシーツがないなんてそんな馬鹿な。
 慌ててリビングに行こうとする。しかし無情にもリビングと寝室を繋ぐドアはきっちりと閉められていた。
 俺がこのドアを開けるのは無理だとわかっている乙犬なら絶対この部屋にもペットシーツを敷いていると思ったのにまさかないなんて。

 あまりにも非情である。
 人間の心理と言うのは出来ると期待していると心なしか栓が緩むものであり、そして出来ないと思うと余計に切羽が詰まるものである。なんてめんどうな仕組みだ。つまりもう限界が近い…!

 いくら見た目が仔猫であろうと中の年齢は16歳という繊細なお年頃である。
 人の尊厳として高校生になって漏らすなんて事はしたくない。だけど今どうにか乙犬を起こしリビングへ行った所で間に合う気もしない。もし起こす為にベッドへ戻ったとしても、そのベッドの上で力尽きそうなくらい切羽詰まっているのだ。もしその上で力尽きてベッドマットに染みをつけてしまったらと考えるだけでゾッとする。

 どうすんだ!?とうろうろした所でトイレなんて出てくるわけもなく身体はぶるぶる震える。
 駄目だ。もう、出る!
 人間みたくみっともないが股間をしっかりと掴めればもう少し我慢も出来きたであろうが今は猫の身体である。
 気付いたらもう勝手に黄色い液体はちょろちょろと体外へと排出されていた。
 ちょろちょろと勝手に出ていく液体を見て、脳が我慢しろという指令を放棄したようだ。身体から力が抜けるとぺたりと座り込み最初に控えめに出ていた体液はしょわ〜と勢いをまして、びたびたじょろじょろと言う音を立て広がっていく。気持ちいい。ぶるっと体が震えると同時に放水が終わった。全てを出しきるとフローリングの床にこの体にこんなに入っていたのかと思えるほどの大きな恥ずかしい水溜まりが出来上がっていた。

 その目の前に広がる光景を見るととてつもなく恥ずかしく、泣くなと思うのにあまりの悲しみに勝手に瞳からぽろぽろと涙と声が溢れる。
 その鳴き声がまたみゃーみゃーと幼い鳴き声が悲壮さを助長させているかのように感じ、悲しさは更に増し涙は止めどなく溢れるばかりだ。

 そんな俺のうるさい鳴き声で目を覚ましたのか、ベッドからもそもそ乙犬が起き上がる気配を感じた。隣で寝ていた筈の子猫がいないと視線をさ迷わせた乙犬が俺を捉える。

「…………タマ?」

 そう乙犬に名前を呼ばれびくりと身体が反応する。もしかしたら怒られるかも知れない。幼い頃の苦い失敗を思いだし少しばかり体が強張る。
 俺を見付けたということでこの小さい体ではどうしたってこの粗相の跡を隠せるものではなく、乙犬はその惨状に気付いたようだった。気付かれた後その跡をしけしげと見られるのはやはり恥ずかしく死にたさが募る。もういっそ今一思いに殺して俺の存在を忘れて欲しいと思うほどだ。
 怒られるかもしれないと身構えていた俺だが乙犬はさっとベッドから立ち上がると寝室から出ていきタオルを持って帰ってきた。
 乙犬はまず水溜まりの上にぺたんと座る俺を掬い上げ、水溜まりを片付けていく。白いタオルが液体をすいあげ黄色く染まっていくのを見るのが嫌で目をそらした。
 それをぱぱっと片付け終えると、今度は別のタオルで俺の身体を綺麗に拭いてくれた。綺麗にし終わると、優しく労るように撫でられる。大丈夫だ気にしてないとの空気を感じる。しかしその空気が俺にはとても情けなく感じてしまい俺は慰めて撫でている乙犬の腕の中で暫くふみゃふみゃと泣き止む事が出来なかった。



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