「ヒロ…!!!」


「ぎゃぁああ痛い!!!!!」



感動の、再会?



マルコさんがベットの上に起き上がったわたしを認めて、
わたしを抱き締めてくれたところまでは感動的な再会、だったはずだ。

問題はわたしが全身筋肉痛だったことと、マルコさんが力一杯抱き締めてくれたことによって
出てしまったわたしの汚い悲鳴。

あまりの痛さに抱き締められたことにドキドキとかしている余裕は無い。

「?!…そんなにあいつ等に痛めつけられたのかい?」
「や、あの、なんて言いますか、必死で逃げてたので…」

言わんとすることがイマイチ伝わっていないらしく、
首を傾げて心配そうにわたしを見るマルコさんに、
「…つまり、久しぶりに全力疾走したことによる筋肉痛です。」
と視線を逸らして言えば、エレノアさん共々盛大に噴き出した。

「…くく、そりゃァ、悪かっ…ぶふ!」
「…マルコさん笑いすぎです。」

そりゃ、そんだけ筋肉ついてれば筋肉痛なんて無縁なんだろうけど。

ぶるぶる震えながら笑いを堪えるマルコさんを力の限り睨みつければ、
やっと笑いが収まったらしいマルコさんが柔らかく笑って
ガーゼをしてない方のわたしの頬に優しく触れる。

「ヒロが、変わって無くて安心したよい。」
「…マルコさんも相変わらずみたいですね。」

そんな顔でそんなことをするのは狡い。
顔に熱が集まるのを感じてふいと顔を背ける。

そんなわたし達の様子を見ていたエレノアさんが、

「…ねぇ、二人は付き合ってるの?」

なんて聞くもんだから、思わず勢いよく首を横に振ってしまって、
再び筋肉痛の痛みに悶絶した。

「ちが…っいたぁああ!!!」
「あら、そんなに必死に否定しなくてもいいのに。」

ころころと笑うエレノアさんに、
今度は完全に矢野が重なって見えた。

「あー…、ヒロはいつ頃から動けるんだい?」

なんだか少し不機嫌そうなマルコさんがエレノアさんに話し掛ける。

「この点滴さえ終われば、いつでも大丈夫ですよ。」

ああでも、と言葉を続ける彼女を、眉間の皺を増やしたマルコさんが睨むように見る。

「筋肉痛が治るまでは、動きたくても動けないんじゃないかしら。」

くすくすと楽しそうに笑いながら、エレノアさんは、
じゃあまたねヒロ、と手を振りながら出て来たドアの中に入っていった。

マルコさんと二人、医務室に置いてけぼりだ。

「…。」
「…。」
「…マルコさん?」
「…なんだよい。」

「なんか、怒ってます?」

マルコさんの顔を覗き込むようにして聞けば、
ふいと顔を背けられて、別に。とだけ返ってきた。

別に。って、

(怒ってるんじゃん…!)

少し切ない気分になって俯く。
久しぶりに会ったのに、な。

だいたい、何にイラッとしたのかわかんなきゃ謝りようがないじゃない。

あれ、なんか切ない通り越して苛々してきたわ。

むん、とマルコさんに向き直って、
両手でマルコさんの頬を掴んで無理矢理視線を合わせる。

「言ってくれなきゃ、何に怒ってるのかわかりません。」

折角久しぶりに会えたのに、こんな感じは嫌です。

頑張って目を逸らさないように眉間にぎゅう、と力を入れてマルコさんの言葉を待つ。

「…ヒロの世界では、あれからどのくらい経ってる?」
「、へ?」

予想外の言葉と、マルコさんの頬に添えたわたしの手をマルコさんの手が包むもんだから、
自分でも吃驚するくらい間抜けな声が出た。

「え、と、三ヶ月くらい、だとおもいますけど。」
「…その間に、誰かいい仲の奴は出来たのかい?」
「…いい、仲、?」

こてんと首を傾げると、マルコさんの目が少し忙しなく動いて、
あー…、つまり、と何か言い辛そうにしたあと、
わたしに視線を戻して、眉間に皺を寄せて口を開く。

「つまり、新しい恋人は、出来たのかってことだよい。」

「…え?それ、マルコさんが怒ってる理由となんか関係あるんですか?」

あまりの意味のわからなさに首を傾げられるだけ傾げる。

「…いいから答えろよい。」
「は、いや、出来てませんけど。」

答えれば、どこか嬉しそうに笑うマルコさん。
え、なんなの。

「…わたしがモテないことを確認して笑うとか失礼じゃないですかね。」

思わずむう、と頬を膨らませる。
と、ふいにマルコさんじゃないところから声が聞こえた。


「なになに、そんなに顔近付けちゃって。
ちゅーすんの?」











おれも混ぜて〜!と笑う顔よりも
その髪型に目が行ってしまいました。


(サッチ!汚ェ顔をヒロに寄せんじゃねェよい!)
(あれ、ちゅーすんじゃねェの?)
(!!?しし、しませんよ!)
(なーんだ、つまんねェの。)
(…おれとそういう仲に見られるのがそんなに嫌かよい。)
(え、マルコさんなんか言いました?)



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