「これと、これと、これ。あ、これも。これも買いましょ。」
「え、あの…ちょ、エレノア…!!」



れっつえんじょいしょっぴんぐ…?



化粧水とか乳液とか、化粧品とか。
この世界のなにが良くてなにが悪いかもわからないわたしには
選んでくれること事態はとてもとてもありがたいのだけど。

「か…っ、買い過ぎじゃないのかなぁ?!」

この世界の通貨がわからないからなんとも言えないのだけど、
さっきからもの凄い数の0がついていて、物凄い勢いでお札が使われている気がするんだけど。

「あら、だって一度海に出たら数ヶ月島に着かないこともあるのよ?」

これくらい買っておかなくちゃ!
と笑う彼女はとても輝いている。
もしかしたらすぐ帰るかもしれないのに、と言っても
もしそうなったらあたしが使うからいいわよ、と言われてしまっては
もうわたしには効果的な言葉は思い付かない。

心の中でマルコさんすみませんと謝っておいた。


「おい、まだ終わんねェのか?」
「あ、エースくん。」
「これだっけ買ったらここでの買い物は終わりですよ。」

次は服です、と輝く笑顔で告げる彼女に、エースくんはうへーと舌を出した。

「なんで女ってこう買い物が長ェの?」
「はは…、すみません…。」
「…ずっと言おうとおもってたんだけどさ、お前、それ止めろよ。」
「…それ、ですか?」

きょとんと首を傾げれば、首の後ろ辺りをガシガシと掻きながら
「それだよ、何て言うんだか忘れたけど、言葉遣い。」
と言う彼に、ああと頷く。

「あー…、なるべく気をつけます。」
「なんだそれ。」
「もう殆ど癖みたいなものだから…。」
「あいつには普通に話してるだろ。」
「エレノアは…少しわたしの友達に似てるから、話しやすいんだとおもうんです。」

ふふと笑えば、どこか納得してない風にエースくんが少し眉間に皺を寄せてわたしを見た。

「じゃあせめて名前の後の"くん"は勘弁してくれ。」

なんかこの辺がもぞもぞする、と鳩尾辺りを撫でて
なんとも言えない顔をするエースくん…じゃなかった、エース、に
わかったと頷いたときに、会計を終えたらしいエレノアがわたし達を呼んだ。

「隊長さん、持ってくださる?」
「ええ?!買い物に付き合わせた上に荷物持たせるとか悪いよ…!」
「あ?別にいいよ、多分マルコもそのつもりだろ。」

そもそもこの重さじゃお前にゃ持てねェよ、と言いながら、
エースはひょいひょいと基礎化粧品等々の入った箱を持ち上げた。

なんだろう、白ひげ海賊団て紳士の集まりなのかな。

あの、本当にごめんね、と言いながらせめて化粧品が纏められた袋を持つ。

それも持ってやると言われたけど、丁重にお断りした。

「ありがとう、エースく…エース。」

顔を見て笑ってお礼を言えば、にししと太陽のような笑顔を浮かべた彼が、
いいんだおれは今度マルコにたらふく飯奢ってもらうからと言った。














…彼の"たらふく"を想像するだけで、マルコさんのお財布が心配です。

そもそもマルコさんの所持金を知らないのだけど、本当に大丈夫なのかな…!

(ちょ、エレノア服選び過ぎだって…!)
(あらそう?)
(半分、いや、4分の1でいいよ!)
(あ、そうだヒロ、下着買うからサイズ測ってきて頂戴。)
(え、いいよ適と(測ってきて頂戴。)
………はい。)



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