サハラに死す


吐息の合間 その空白に乗せた
僕が思い出せる 全ての美しいこと
君の声 交わした視線
言葉なんていらなかった
シナプスが歓喜して 悲鳴を上げていた

「私」は寂れた廃墟の庭に 零れ落ちた花だった
「僕」は冬を包む雪の世界に 隠れて消えてしまおうと

ゴスペルに宿る神様は 霧けぶる彼方へ逃亡中
蹴り上げたアスファルトから木霊する 鮮烈なアリアを
君とひとつ残らず 喰らい尽くしてしまおう

脊柱から動脈を通し 投影した宵闇を
硝子体から唇へ乗せ 一矢の光で穿ってくれよ

オリオンが高空を統べる頃
見渡す風景を青白く染める月は見ている
何処に行けど巡るものは何かと問う
あの数多の輝きを

罪深いスパーク そうして僕は死んで生まれた
強欲が為に得た星の声 我侭に奏でた理想郷
暗晦の下でさらさらと 虚構の僕の欠片はサハラに死す

輝く砂となって溢れてゆく この歌を今
君へと贈る




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