夜行列車(シロップノユメ)


微かに滲んで滑り込む
鳴り止まない即興曲
夜行列車の中で
僕は瞬(まばた)きを数えてる

不協和音が五線の上を
乱雑に横切り大きく跳ねた
空想のカーブを描いてよ
川を渡る橋の上で

僅かにたわんで回り込む
名前のない疾走だけが
僕らを悠久の彼方まで
弾き飛ばしてみせるんだ

ダークチェリーの缶を切ると
軋んだ甘い毒が流れ落ちる
血に似た色気のシロップで
満たされたいものは何

遥かに霞んで映り込む
眠らない雑踏と夜の夢
いつかきらきらした闇で
君と重なる確かな証拠




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