逃げ損なって蹴られた背中が痛んだ。全力ではなかったにしろ友人を足蹴にするとは大したものだと思う。
それでも、ずっと燻っていた物と引き換えにした代償だと言うなら甘んじて受けよう



幼馴染み、友人…そんな枠を飛び越えてもっと違う付き合いが出来たなら、そう何度も思った。
今も、浅はかにも想い続けているのだが
やられたな、と苦く思ってしまうのは仕方ない。
おれはキッドが弟の様に可愛くて一番の友人で仲がいいと自負していて、恋人を守る…そんな気持ちでキッドに尽くしてきたのだ。
そうやってのうのうと自己満足の湯に浸かっているところに現われたのはトラファルガーだ

ずかずかとキッドの中にトラファルガーが入り込んで行く様をおれは呆気にとられながら感じていた
「仕方ねぇな」なんて笑いながらトラファルガーの事を話すキッドに胸が痛まない訳がなかった
それでも、なんとなく嬉しく思ったと言う事はこの時点でおれの中ではケリがついていたからだろう




あの夜、初めてトラファルガーと顔を合わせた。
見て取れる程おれに敵対心を燃やし言葉を知らない幼子のようにキッドに構われたがる姿に加虐心が湧きついついトラファルガーを刺激してしまったのが利いたのだろう
酒に飲まれたトラファルガーの馬鹿によりそれは目の前で起きた。
トラファルガーがキッドにキスをしたのだ

驚いたキッドはトラファルガーを殴り飛ばしたがおれはそんなキッドの姿が目に焼き付いて
少しだけトラファルガーがこのまま逝ってくれたらいいのにと思った。


その所為かもしれないが、おれはこれ限りの馬鹿をした
きっと殴られるんだろうと期待をしながらキッドにキスを。軽く押し当てるだけ、数秒もなく重なりを解く
きょとんと、こちらを見るキッドに問い掛けた言葉が虚しく思えた。





トラファルガーを殴り飛ばした時の、頬を赤らめたキッドの顔がこの先もずっとおれの目には焼き付いているんだろう。
トラファルガーは勿論知る由もなくキッドとて無自覚な筈だ。



焦れったいな、と鈍い痛みの残る背を竦めてみた






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