「おれが、いるだろう」
とは、どう言う意味なのだろうか。
言葉を思い返し考えると触れ合った唇がジンジンと脈を打つ様な気さえする
おれは、たった数秒触れ合った唇の感触が今も消えないことに悩んでいた。
男に、…酔っ払ったトラファルガーにキスをされどうにも思わない訳ではなかったがこれといって不快な訳でも嫌悪が湧くでもなく
でもこの胸につっかえる感じはなんなのだろうか
思わず殴り飛ばしてしまった拳を擦りながら、そのせいで変色し腫れ上がった頬を思い出す
キラーにも言ったがただ単に驚いたのだ。キスと、トラファルガーの表情に
「それで?」
「あ?」
「いや、こう言う相談事を受けたのは初めてだからな…他に何かあるのかと」
「…わかんねぇ」
「…。」
例えば、例えばだ。酔っ払ったキラーにキスをされたとしても愉快に思わなくても不快だとは思わないだろうし嫌悪が湧く事もないだろうと思う。
後で酔いが冷めたキラーがそのことを覚えていてもいなくともおれは少し苦い顔をして「テメェ、おれにキスしやがって」なんて笑い話にしてやる筈だ
見知らぬ男相手にされるなら嫌悪も湧くんだろうがキラーとはダチとしての付き合いも長いし食いさしを交換するなんてのもザラで…
わからねぇ、トラファルガー相手にも似たようなもん、だろ?付き合いは短いが最近しょっちゅう一緒に飯食ったりしてるし食いさしだって…
「…キッド」
「あぁ?」
「お前はなにが気に食わないんだ」
「別に気に食わねぇとかじゃ…」
「そうか?お前の顔には気に食わないと書いてあるぞ」
眉間を突いてくる指をはたきやめろと睨めば面白そうに笑われて、更に脛を狙って繰り出した蹴りはあっさりとかわされた
「トラファルガーにキスされてどうだった?」
「あぁ?…別に野郎、に…?…、…なに」
「……殴らないのか?」
「びっくりし過ぎて手が出なかった。おい、なに距離とってやがるテメェ」
「みすみす殴られるわけないだろう。…で?」
「あ?」
「おれとのキスはどうだった?」
「…別に」
別に、…なんとも思わなかった
(…ま、2度目だし?)
(そうだな、小学生の時にお前から奪われたからな)
(テメェ…数に入れてんのかそれ)
(ファーストはファーストだろ)
(…それよりキラー)
(ん?)
(顔は避けてやる。逃げんなよ)