丸2日、顔を合わすこともなく過去っていった




ユースタス屋にキスをしたその翌日から今日で3日経ってこの丸二日は1度も会ってない
昨日の昼病院に行った以外にはずっと部屋に籠っていた。

朝、ユースタス屋が仕事に行く時間に開閉するドアの音
夕方、夜、ユースタスが帰って来てまたドアを開閉させる音を聞き
ユースタス屋の部屋と隣り合う壁に背を預けて、ユースタス屋の部屋から微かに聞こえて来る生活音に耳を傾けて過ごす


今日も朝ユースタス屋が仕事に行く時間、音を聞き届けてからずっと悶々として
あぁ、ユースタス屋とキスしたいな…
覚えてないからこそ、もう一度したいと思う
おれは触れ合った唇の感触さえ覚えてなくて知らなくて
酔ってさえ居なければ、いや…例え酔ってても意識がしっかりしてたら
あぁ、キスしたい
キスしたいキスしたい。






物音一つしない隣りの部屋。どうしてこうも隣りに越してきた男をこんな風に気にするのか。
そうは思っても気にかけてしまうのはトラファルガーがアホで危なっかしいからだ。
それに、ほぼ毎日勝手にベランダ伝いに部屋に来る奴がここ2日来なくて、おまけに物音がしないどころか部屋に居る気配すら感じない。
死んでるんじゃねぇだろうな…
朝、仕事の行き掛けにドアを叩こうかとも思ったが厄介事に巻き込まれて仕事に遅れるのはごめんだし、その前にこの時間にトラファルガーが起きてることのがなさそうだ。
夜でもいいかとドアを通り過ぎ、エレベーターなんて洒落たものはこのアパートにはないのでコンクリの階段を下って行く
それなら今晩は…なんて、あいつの分の飯まで勘定に入れて考えるおれは、…おれは何だ。

知らず知らずの内に指先は唇を触っててそれに気付くと自分でも自覚する程眉間に皺を寄せていた。
一瞬いろんな事が頭の中を駆け巡った気がする
あぁ…忌々しい。
男同士キスをしてその何とも言えない感覚をおれしか覚えていないことが

今更、腹立たしいと思った






夕陽に赤く染まる頃、日中の日差しで温まった部屋の温度を下げようと換気も兼ねてベランダに続く窓を開けた。
最近は過ぎる程温かかった陽気もまた数日後には寒さが戻るらしかった

「花見してぇな」

暗くなりつつある遠くの空を見ながら呟きベランダの転落防止の手摺に凭れる。
ぼーっと外を眺めているとカラカラと窓の開く音がした

「よう、生きてたか」
「…ユースタス屋、居たのか?」
「今帰って来たばっかだ」

いつもはユースタス屋が帰って来た時は音でわかるのにと気付かない程ぼーっとしてたらしい。
おれの反応にユースタス屋が苦笑した

「そか…おかえり」
「おう。…お前、どうかしたか?」
「ん?」
「一昨日も昨日も邪魔しに来なかったじゃねーか。物音もしねぇし」
「なんだ、おれが居なくて淋しかったのかユースタス屋?」
「いや、死んでたら面倒くせぇなって…最近、昼間は暖ったけーし臭ったりしたら嫌だろ?」
「酷くないか!?」

たった2、3日話さなかっただけなのに随分久し振りな気がして
おれはこの取り止めのない会話がずっと続けばいいと思った。



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「いや、死んでたら面倒くせぇなって…最近、昼間は暖ったけーし臭ったりしたら嫌だろ?」て言うユースタスをどうしても書きたかった…ので没救済


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