「悪ぃ遅くなった」
「そんなに待っていない…気にするな」


仕事終わりに昔から付き合いのある、所謂ところの幼馴染みと晩メシの約束をした
待ち合わせの時間より遅れながら店に入ると既に相手は来ていて、遅れた俺を笑って許した

「適当に頼んである」
「ああ、サンキュ」

ガキの頃から変わらず付き合っているキラーとはこうして今でも飯を食ったり一緒に出かけたりする。
気兼ねなく過ごせるいい奴だ

「林檎は食い切れたか?」
「あと3つ…もう当分食いたくねぇ」
「思ったより早いな」
「分ける奴がいたからな。助かった……いや、助かってねぇな。迷惑だ」
「…何を言ってるんだキッド…」

目元を覆う髪でよくわからないが相当怪訝な顔をしてるんだろう
それに少しイラつきながらも、隣人のトラファルガーを思えばイラつきを通り越してなんだか呆れてきた
運ばれて来た食事を摂りながらここ最近の出来事を咄々と話してみることにした




「……愉快、な男じゃないか」

話終えてキラーは感想の言葉を探しに探し出した結果そう言った。

「バカって言っていいぜ。俺が許す」
「まぁ…、バカそうではあるな」

お前に許されてもな、と苦笑しながら本音を零しすキラーに満足して水割りの薄い酒を飲んだ
やっぱりアイツはバカでどうしようもない奴だからな

「しかし…珍しいじゃないかキッド」
「なにが?」
「お前が、たかが隣りに越して来た男に構うなんて」
「…相手が面倒持って来んだよ」
「そうか」

声には出さずに笑うキラーを怪訝に思うがそれ以上俺は喋るのをやめた
経験上ここで何かを言うとよくない気が…する

「そういえば女とは別れたと言ったな」
「あぁ…うざかったしな」
「なら、今度の休日買い物に付き合ってくれないか?」
「なら、ってなんだよ…別に女がいたって買い物くらい付き合うっての」
「…そうか…悪かった。今の言い方はお前には気に触る言い方だったな。拗ねるなよ?キッド」
「お前、一々俺をガキ扱いし過ぎだからな」

何時までもガキ扱いしてくるキラーを睨み文句を付けたが涼しい顔で流される
これも恒例と言えば恒例だし腑に落ちないが、昔から変わらないやり取りは悪い気はしなかった

「そろそろ出るか?送ってくぞ」
「おう。あ、家で飲むか?どうせ帰ってから飲むんだろ。よければ泊まっていけよ」
「それも悪くない…」
「缶ビール何本かしかねぇからコンビニ寄ってこうぜ」


伝票を手に立ち上がるキラーに続いて俺も腰を上げる
今日の払いはキラーだ。
大の大人が精算の時にワリカンだのでもたつくのは格好付かねぇからと、いつの間にか交互に払うようになったのは暗黙のルールになっている

それからコンビニ寄り、家まで若干の遠回りしてキラーがバイクを走らせる
寒いのは苦手だがこの時は気持ちが良くアルコール熱くなった頬が冷やされるのも心地良かった




「最初からここで飯食えばよかったな…」
「違いない…」

ツマミになればと和え物や炒め物を作れば普段の晩メシのようになり、さっきも店で結構食ったのになと苦笑しつつ
飲んだり食ったりしながら次の休みに何処に行くか決め、会話が途切れた時だった

ガシャン…ッ

「…、なんだぁ?」
「隣りの部屋から聞えたな」

隣りの部屋から微かに何かが割れる音が聞え不審げにキラーと見合う
またアイツは何かしでかしたのか

「皿でも割りやがったのか?」
「…それにしてはやけに音がでかく聞えたが…」
「…ったく」

また面倒事かと溜め息が出るが
このまま放っておいても泣き付いてこられたら結局は一緒だよな…と、様子を見に自ら行くことにした。
…我ながらいい奴なのだろうか


「おい、トラファルガー」
「…、ユースタス屋…」

トラファルガーの元へと様子を見に行くと奴は何故か頬から血を流している。

「お前…何やってんだバカ、血ぃ出てんぞ?」
「……、ユースタス屋ァ…すごく、いてぇ……!」
「は?うわ…」
「溜め込んだ皿洗って片付けようとしたんだが…」
「…酷いな…」
「お、キラー…じゃ、ねぇ!トラファルガーまず指の血止めろ!」
「馬鹿だなユースタス屋。止まれと言って止まるかこんなもん」
「自分で押さえて止血しろってんだよ…馬鹿!」

パンッと軽く頭をはたき、ようやく指を押さえて止血をするトラファルガーのパーカーの襟首を掴み引き摺りながら洗面所…


「…洗濯しろよ…」
「…ユースタス屋のエッチ」
「グーで殴られてぇのか」
「ははは、冗談だよユースタスさん」

血を洗い流す為に入った洗面所は風呂場に続く脱衣所でもあり洗濯機も置かれているが…
洗濯機も脱衣籠も溜め込んだ衣類でいっぱいだった。それどころか床にまで脱ぎ散らかしてやがる

「なァ、血ぃとまんねぇんだけど」
「お前…なんで皿割ったくらいでこんな深い傷になるんだよ」

取り敢えず洗濯物の山は見なかったことにしてティッシュで傷を覆いながら洗面所をでるとキラーは割れた皿を始末しているところだった

「悪いなキラー」
「いや、…トラファルガー勝手に上がらせてもらってるぞ」
「……どうも」
「…手当て、してやったらどうだキッド」
「おう。来い、どうせここ救急箱とか置いてねぇだろ」
「必要ないからな」
「どの口が言ってんだ」









割れた皿を適当にあった空袋の中に放りながら
よくもまぁ割れたものだと頑丈が取り柄の某パンメーカーの粗品皿を見る。
皿だけではなく幾分割れやすいガラスのコップも厚い底の方までみごとに砕けていた。

転々と落ちている赤い液体はトラファルガーと言う男の血だろう。
パッと見で確認したが左の頬と右手を怪我しているようだった。
今はキッドに手当てしてもらっているはずだ

「頬は偶然として…」

一際血の落ちた飛沫の目立つ床、そこに浮ぶ鋭利に砕けた破片

「まったく。子供の"構って"にしては無茶をするものだな…」

トラファルガーが自ら握ったかあるいは…まぁ、どちらにせよ自身を傷付けるために使われたであろう破片をサッと水で流してから同じように袋へ入れる
どうやらトラファルガーは俺に敵対心を燃やしているようだ

「面白いな、トラファルガー…」






 ̄ ̄ ̄
ちょっと強引に話を進めてますっ


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