隣のお兄さん
高校を卒業して、俺はこの春から大学へと進学する
それを期に一人暮らしを始めるわけなのだが
「やっぱり不安…なんてな」
それなりな感じのアパート。
5階建て1階につき2部屋。最寄りのバス停徒歩3分、最寄りの駅まで自転車10分。
そして俺、トラファルガー・ロー
4階、階段上がってすぐの1部屋目。ここが今日から俺の住家な訳で
「取り敢えずお隣さんだけでいいよな…」
実家からの荷物はまだだが冷蔵庫やベッドは既に設置済みで。
取り敢えず今日必要なものをデカめのバッグに突っ込んで来た。それから、母に持たされたご当地のお土産…
ご近所さんに挨拶はしろとキツく言いつけられたのだが
面倒臭い…でも綺麗なお姉さんがお隣とかだったら…
そう思い意気揚々お隣さんの玄関先。
軽く一回ピンポーンとインターホンを押す
「…留守、だったり?」
普通なら待ってこのくらいで出迎えてくれそうなものだが音沙汰ない。留守かと思い立ち去ろうとした時にガチャリと開錠の音がした
あ、いた。
「こんちは…」
「…誰だ」
あー!ちゃーっ!
激しく後悔した。ゆっくり開いたドアから出てきた家主
髪の毛は目を引く鮮やかすぎる赤、眉間による皺に人を見るだけで殺せそうな程鋭い瞳
見るからにヤ●ザか族だ。
「すみませんごめんなさい」
「…あぁ?」
「あ、いや…」
その風体に思わず謝ってしまった。しかも2回、謝ってしまった
怪訝そうにし更に眉間の皺を深くしたお兄さんに慌てて首を振り持参したご菓子箱を突出す
「っと、隣りに今日越して来たトラファルガーです」
「…あぁ…」
「ご迷惑にならないよう気をつけますのでっ」
「はぁ…」
どうも、と菓子箱を受け取ってくれたお兄さんは小さいながらも礼を言ってくれた
「では」
「ちょっと待って」
「ぇ…は?」
去り際にそう引き止められ俺はその場から微動だにせずに待った。
逆らったらなんかありそうなんだもの。
と、言うものの程なくしてドアが開き
「嫌いじゃなければ持ってけよ」
「あ…ありがとうゴザイマス」
リンゴを2個手渡され戸惑いながら御礼を言うとなんとなく笑われた
「ユースタスだ。迷惑かけんなよ、お隣りさん」