砕かれた膝と肩は何の処置もしないまま固まって膝から下の感覚はなくぴくりとも動かせない。
肩も、折れた鎖骨だけは自分でなんとか押し込んで位置だけは正常に戻し、脇を少し開く程度には動くが不自由には変わりない
それもこれも、どれも。
あの何処もかしこも赤い男のせいなのだが

首に回る革製の首輪にもいい加減に慣れた
始めの頃は慣れずにむず痒かったが骨折した骨がそのまま癒着して固まってしまうほどの時間が経てば、…まぁ、慣れるのは自然なことだ

それ程の時間を日がな一日、ぼーっと過ごしている
あてがわれたソファが定位置で欲しいものはと聞かれた時に答えた新聞や本を読みふけり
読み終わりそうな頃にまた与えられる新しい本のお陰でそう退屈を感じる事もなく。

そんなおれのやるべき日課は赤い男への挨拶代わりのキスとセックス。
そして男からの挨拶代わりの暴力的な愛を受け入れ受け止めることで。
この日常に割りと平然に溶け込んだおれはかなり順応性に長けているのだろうか

「おかえり、ユースタス屋」

開いていた本を閉じガツガツと無駄に重そうな足音を出迎える。出迎えると言っても体を少し動かして赤い男に顔を向けるだけだ

「ん。」

それでも短く頷いて挨拶を返してくる様はどこか満足気で、ソファに座るおれの膝に遠慮なく跨がり唇を食らうようなキスや背に回る手が縋るように服を掴む行為は甘えているようにも取れた

「ん、ぇ…ッ、う」

赤い男は嘔吐くくらいの深いキスが好きらしい。
大きく開いた男の口内を目一杯伸ばした舌で出来るだけ深く探る
上顎を舐め稀に深く入る舌に頬を染めて涙を浮かべながら嘔吐く顔がとても幸せそうだ
互いの頬や顎を唾液でベトベトにさせ赤い男がヒクヒクと嗚咽を漏らし始めた時、首輪を後ろへと引かれた。
日課の一つに終了の合図

口を開けたままに合わさりから解かれたせいで唾液が糸を引きポタポタ落ちる
勿論、おれの顎に生えた髭も唾液に濡れて
赤い男は赤い舌を出すとざりざりと髭を舐める。どうも最近の気に入りはこの髭のようで必ず舐めたり触ったりしていた。
男はぢゅっと音を鳴らし吸いつき舌先でチクチクした感触を楽しみながらおれの下腹に触れる

「昼、ションベン行ったか…?」
「…いや」

返事をすると同時にファスナーの下がる音が聞こえて下着の中を探る手にふにゃりとうなだれたままの性器を掴まれ外に引っ張り出された

「出せよ」
「刺激するな…、勃起すると出しにくいだろ」

おれの開いた足の間に身体を割り込ませ性器を咥える男の、血で染めたような色の髪ををくしゃりと掴みながら意識を尿意へと持っていく
尿がなかなか出せずにこの男に散々殴られたのはいつの頃だったか。
この男の尿と大量の水を容赦なく飲まされて半分意識の飛んだ様で漏らしたおれの尿を犬のように舐め飲んだこの男はあの時と変わらず暴力的な瞳を細め淫らに赤い髪を揺らしてる

「ッ、イ……!?」

衝動的に掴んだ髪を勢い良く引きのけ反るように性器から口を離す男の顔面にジョロジョロと放物線を描きながら出る尿を掛けてやる
額や頬に当たりながら流れる尿を浴びながら呆けた顔をする男にザマァねぇと笑い赤い髪も満遍なく濡らしてやった

「お前の気分が少し理解出来た気がする、ユースタス屋」

男の濡れて頬に貼り付く髪を指先で払い自由に動く方の足で股間を踏み付ける

「アッ…ぃ、い!」

痛みに顔を歪める男の双眸を覗き込み次に鼻っ柱に拳を叩き込めば鼻血が溢れ唇へと伝い顎へと流れた
赤く濡れる鼻の下をベロリと舐めるとさして美味くもない鉄錆のような味が口内に広がる

「フフ…不味いな、ユースタス屋」




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ある日のローの気紛れ

おれをこんな風に扱って何が楽しいのか、そんな疑問が唐突に頭を過ぎったらしい
このあとボコボコにされながらへらへら笑うローがいます

それはいつになるかわからない次回に。



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