トラファルガーと暮らすようになって少し経つ。
時間と場所の共有でトラファルガーについて知らなかった事が毎日少しずつ分かるようになった

連日続いている夜更けの雨
今日も一緒に入った筈のベッドの中、おれの隣にはトラファルガーの姿はなくて柄にもなく寂しいと言う感情が働いた。
静寂を破る雨音に、温もりを求めて撫でたシーツを擦る音さえもかき消される
指先に伝わったのは冷えた感触だった

裸足でリビングへ続く短い廊下を歩く度に、いくら殺そうとしてもひたひたと足音が立つ。
静かに開けたリビングのドア、薄暗い中ソファに座り窓を見るトラファルガーを見つけた
ソファにゆったりと深く腰掛け身動ぎもしない

「…そんなとこ居ないで…こっちに来いよ」

寝てるのだろうかと暫く様子を伺っていると眠たげな間延びした声が届く

ひたひた、微かな足音をたてながらトラファルガーに歩み寄った

「どうした?」
「テメェの方がどうした…」

眠気と、言葉には出せない理由のせいで不機嫌な声が出る。
見透かしたような目をふと細めてトラファルガーが手を引いて抱き寄せた

「雨の音で寝つけなくてな。ベッドん中いたらお前起しちまいそうだったから」
「ふぅん…昨日もか?」
「あぁ、昨日のその前も。雨が嫌いってんじゃなくてなんか目が冴えるんだよな…これはガキの頃から変わらねぇんだ」

トラファルガーの肩に凭れながら雨音に耳を傾ける

「…おれは、眠くなる…」

目を閉じながら呟くと、雨音に簡単に消されてしまうようなか細くフフ、と笑う声が耳元で聞こえた
おれの背を支える手にゆっくり撫でられその心地よさに余計に眠りへと誘われる

「まだここにいる気か…?」
「ん?…そうだな、そろそろおれも寝るとするか」

嘘つけ、とすぐそこまででかかった言葉を飲み込んだ。
きっとおれが寝たらまた1人起きてぼうっとするんだろう。

連立って寝室に戻りそろってベッドに入る
おやすみ、と声をかけトラファルガーは目を閉じた
けど、おれはそんな嘘嬉しくねぇんだ

「…、ユースタス屋?」
「テメェ、が寝るまででいい…」

トラファルガーの懐に潜り込んで薄い胸板に顔を押しつけると笑われるかと思ったがそんなことはなくただ優しく抱き締められて
起こして悪かった、と呟く声を聞きながら目を閉じた



翌日、目を覚ますと相変わらず薄い胸板は目の前にあって穏やかな寝息が聞こえた
起こさないように注意しながらもそもそと腕の中から這い出ても起きる気配はない
珍しく熟睡してるトラファルガーはそのままに先に起きて朝食を作りそろそろ起こそうかと思っていた頃にトラファルガーのこれまた珍しく寝起きでもすっきりとした表情を見た。

次の雨の夜もその次の雨の夜も、トラファルガーの胸に顔を埋めて寝る



「多分、さびしくなるんだ」

ある雨の夜。
いつもと違いおれがトラファルガーを抱き締めていると胸元からくぐもった声が聞こえた
なにが淋しいのかと聞く前に穏やかな寝息が聞こえる

明日は一日中雨であればいいと少し期待をしておれも目を閉じた
昼間の雨が嫌いだと教えたら一日中抱き締めていてくれるだろうか





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雨が強かった深夜に書いてたもの。なんともなしに物憂げな2人は雨のせいにして

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