「回るベッドとか?」
「…古くねぇ?つーか回ってどうすんだって話だろ」
「それを言ったらお終いだぞユースタス屋」

外観は至って普通のビル。あからさまではないがよく見れば入口は人目に付きにくく、またそう言う雰囲気が見て取れなくもない
そんな、所謂ラブホテルへ。

「肩でも抱いて入った方が雰囲気でるか?」
「…どーでもいいけどよ…抱くんなら腰にしろ。屈んで歩くなんてヤる前に疲れるだけじゃねェか」
「喧嘩売られてるような気がするが…ま、そうしておく」

軽口を叩きながらも仲は良いのだろう2人共が表情を緩めつつ、比較して身長の低い方の男が隣りを歩く相手の腰を抱き寄せてホテルのエントランスへと入って行った




数日前である。ローとキッドは散らかる部屋の真ん中で事に及んでいた

「ハッ…ぅ、あ、あっ…トラッ…も、無理…疲れ…っ…」
「あー、悪ィもうちょっと付き合え…ッ」

キッドはぐずぐずと泣きそうな声で懇願しローもまた切なそうな声で返す。
互いに疲労の色が濃く数分後に漸く事を終えるがそのまま物が散乱する床へと身を投げていた

「…片付け、しねぇと…」
「そんなのいいだろ…今日は寝ちまえよ。つーかユースタス屋痩せたろ?」
「テメェこそ…髭の手入れしろ…なんか老けて見える。あとクマが酷ぇ、やべぇ」

疲労困憊の2人。その理由は一概にセックスによるものではなく、大学の課題に生活費を稼ぐ為のバイトにと忙しない生活を送った為のもの。
忙しい日々の中でも若さ故に性欲を持て余し、こうして久し振りに恋人同士身体を重ねてはみたが
その結果キッドは疲労故の体力不足に陥り、ローは疲労から勃起はするものの中々達する事が出来ず散々なものになってしまったようだ。
忙しさのピークはどうやら乗り切ったようだがこの脱力感の否めなさはどうしたものかと2人は考える

「…あ、そーいや…」
「…?」

ローは脱ぎ捨てていたジーンズを引き寄せて尻ポケットから皺の寄った紙を引っ張りだしキッドへと見せた

「なに…ラブホの割引き券…?」
「同じ科の奴が恋人いるならってくれた」
「…期限今月末じゃねェか。平日しか使えねぇみてーだし」
「だからくれたんだろうな」

タバコに火を付け深く息を吸うとローはポツリと呟いた

「…行かねぇか?」
「俺、女いねェぞ?」
「!?バカ、俺とだ…つーか女いたらびっくりどころじゃなくて修羅場だろ」
「冗談だ。…けどよラブホって野郎同士で入れんのか?」

恋人であるキッドの発言にローは目を剥き少しだけ訝しげな表情をし深くタバコを吸うと煙をわざとキッドへと吹き掛ける

「ぐっ…ッ、けほ…やめろっ…煙ぇ」
「最近じゃあどこもわりとOKらしいぜ?」
「コホッ…ふーん」
「どうする?」

パタパタと煙を手で扇ぎ散らしながらキッドは小さな声で呟く

「……く…」
「…ん?」
「行く」

キッドの逸らされた視線と上ずる声にローは頬を緩めた






そして、ローはバイト終りにキッドと待ち合わせをし軽く近場の店を回りデートを楽しみながらラブホテルへと訪れた。この通りになると最寄りのコンビニにさえ人気はないようで、そこまで気にする事もなくローはキッドの腰を抱き寄せキッドも心持ち寄り添いながら足を踏み入れた。


「結構部屋空いてんなァ」
「時間が時間だからな…」

初めて利用するが、ある程度の知識は在るため浮き足立ってしまうのは仕方がないのだろう
パネルに表示されている部屋をあれこれ吟味しながら選び鍵を受け取るとその部屋へと真直ぐに進んで行く

「お。思ったより広ぇ」

室内に入りやっと密着していた身体を離しキッドは内装をぐるりと見回した。
程度の良いソファ、テーブル、スクリーンなどの調度品
入口からは見えない角度にある広々としたベッド

「風呂がガラス張りってのはねぇのか」
「お前、古いよな…」
「鏡張りでもねぇ」
「鏡張りん中で勃つ自信ねぇよ」
「勃たせる自信はあるぜ?」

少し前までは定番だったのだろうが、色々な安全面、安全性を考慮された結果それらは最早風化している
ローは少し期待していたようだがキッドは無駄に回転をかけられることと、無駄に羞恥を煽られることは回避出来密かに胸を撫で下ろした

「遠心力がセックスにどれほど影響するもんなのか試したかったな」
「っん、言ってろ…」

背に抱き付いてきたローに首筋を食まれキッドは身を竦ませるが性急な手つきで胸元をまさぐられ少し焦る

「…おい…っ」
「フフ、いつもよりドキドキしてんなァユースタス屋」
「っ…るせぇ…テメェも一緒じゃねーか」

服の上から探し出された突起を指先転がされキッドむず痒いような刺激に身体を捩り、その反応に楽しそうに笑うローの声を聞くと諦めたように力を抜きローへもたれる。すると背中にローの普段より熱く胸板の熱さと鼓動が伝わっきて自然と目が細まった

「ん、なぁ…取り敢えず座らせろ」
「俺の上にか?」
「ばーか…ソファ、に…」

部屋に入って数分、立ったまま戯れるように胸元や腹部をまさぐるローをなだめソファへと促そうとするがキッドはベッドへと押し倒されてしまい深く口付けられた

「ん、ふ…」

無遠慮に唇を割って入ってくる舌を招入れ混じる唾液を嚥下しながら舌を絡めているとキッドは片足を胸に付くほど曲げさせられ大きく足を開かされた。投げ出したままの方の足にはローが跨がっていて、何をする気だとうっすら目を開けるとローの欲情の見える瞳とかち合った。
珍しくローの目が笑った気がしたかと思えばキッドは不意に訪れた下肢への刺激に大袈裟に腰をビクつかせることになった

「んんっ…ン、ふっ!ぅ、うっ!」

衣類を身に着けたままローは自分とキッドの股間を押し付け合うようにすり合わせグリグリと強めに腰を回し時には突き上げる様に腰を使出す

「あ、アッ…!」

ジーンズの堅い縫い目とそのジーンズ越でもわかる程の硬度を持つローの性器にゴリゴリと潰されるように刺激されキッドの性器は反応し、止めようのない先走りで下着を濡らし始める

「ンンっ…ふぁっ!やめっ…やっ…」

ローのキスから逃れながらキッドは逃けようと身を捩るがローがそれ許す筈もなく体重をかけて阻止し、体重をかけられることにより身体が更に密着しそれに頬を赤く染めたキッドはローを睨む。
しかし睨まれても涼しい顔のローに小さく唸りながらキッドは自らねだるしかないのだと諦めた

「ぁ…は、はぁ…く、そ…も…脱がせ、…ちゃん、とっ…」

キッドは赤く染まっているであろう自らの顔を腕で隠しながら悪態を交えねだる
その様子を見て今にも鼻歌を歌い出しそうな調子のローはまだ苛めてやりたいと思いながらも
今の可愛い恋人に免じ手早くジーンズを脱がしにかかった…が、しかし
キッドは7分丈の黒のレギンスにデニムのハーフパンツを合わせて着ているのだが、デニムを脱がせた所でローは手を止め厭らしく口角をあげた

「なかなかそそられる…」

目を細めまるで子猫か何かを可愛がるような手つきでキッドのペニスをレギンスの上から撫でる。敏感な場所を触られ身体を強張らせるキッドが「何が」と赤面が治まりつつある顔をのぞかせ自分の下肢を見るが再び顔に熱を集まらせる事態となった

「思わぬ誤算だ…意外と萌える」

クク、と含み笑いをしながらローはジックリとその姿を見た
レギンスのわりと身体にフィットする特性故にキッドのペニスの形をくっきりと浮き上がらせていて、それがローの目には扇情的に映ったようだ

「ッ…」
「おっと、まだ脱ぐなよ…このままでいい」

視線に耐え兼ねたキッドが自ら脱ごうとするのを制止してローは開かせた脚の間に身体を割り込ませ股間へと顔を埋めてためらいもなくレギンスの上からペニスを食んだ

「ッ…あ、ぅ…」
「ユースタス屋はトラパンしか履かねぇからな…ボクサーに変えりゃいいのに」
「ん、は…ぁ…テメェ、が…そんな、するから履きたくねぇんだよ…ッ」

うっとりと目を細めながら股間を食んだり頬擦りしたりする相手にレギンスを履いて来たことを後悔しながらキッドはローの肩を蹴り押す

「足癖悪ィな…」
「る、せぇ…ッ」
「フフ、…少しムカついたからやっぱこのままイかすか」
「は!?ちょっ…あっ」
「お前服着たままで出すの漏すみてぇで嫌っつってたよな」

チュッと肩に乗ったままの足の甲へとキスを落としローはニタリと笑みながらキッドが嫌がる行為を実行すべく未だレギンスを窮屈そうに押し上げているペニスを乱雑に掌に納めた




「ッ!ぁあ、あっ!」

真っ白に飛んだキッドの視界に漸く色が戻って来る頃には下肢は不快感に包まれていた

「て、めぇ…」
「ふ…行儀が悪ィからだ」

黒のレギンスはより色が濃くローが手を滑らせるとしっとりと湿っているのがわかった。
全てはキッドの出した汗やカウパーを含めた体液によるものでまだ調わない呼吸に胸を上下させながらキッドは濡れたそこが冷えて行く不快感に眉を寄せた

「ふふ。おれはお前が本当に小便漏らしても全く気にしねぇけどな」
「ふざけんな…おれは気にするっ」

ぐずっ、と目尻を擦りながらキッドは少し不機嫌そうにし早く脱がせろと目で訴える

「ふざけちゃいねェ…本当に。おれはお前が何を漏らそうが掌で受け止めてやるよ」
「…お前、その言葉が万人に喜ばれるとか思ってたらとんだ勘違いだかんな…」

若干ローの言葉に引いていると漸くレギンスと下着の腹部のゴム部分を引っ張り下げられる
「ん…」

ニチッと粘度の在る音と共に脱がされた下着と亀頭を粘り気のある糸が繋ぐ
外気に曝されふるりと身体を震わせふと詰まった息を吐いた

「取り敢えず時間はたっぷりある…先ずは普通にヤるか」

脱がせた下着に付着した精液を舐めながらローは笑うとキッドを俯せにさせて白く滑らかな丘にキスを落とした




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