休日の今日、もう日も昇って朝とも言えず、しかしまだ昼にも遠い時間。キッドは学校がある日よりも大分遅くに起き出した。
起き抜けに時間を確かめるのと同時にメールや着信の有無を確認する。着信とメールが1件ずつあり、どちらとも同じ人物からだった。
メールは電話に出なかったキッドに対してまだ寝ているのかと問いかけるものと、遊びに誘う内容だった。
キッドは欠伸をしながら返信を打ち返し、慌てるでもなくゆったりと出かける用意をしていると先ほどのメールに返事が来たようだ。キッドはそれを読んだだけで返信はせず家を出るのだった。





悪友って辞書で引いてみろ!





誘われたのは友人宅だった。一人暮らしのそこは羨ましい環境だ。新しめのマンションは1DKだが高校生の1人暮らしには広く快適な場所だった。それ故に仲間内で集まることも多く、はめを外すには持って来いだ。
来なれたマンションのポーチを抜けて、目当ての部屋に着くとインターフォンを一度押してから勝手にドアのぶを捻る。すんなりと開くドアを当たり前のように感じながらキッドは玄関に入り込んだ。

「ちーっス」
「おー、意外と早かったな」
「おお、って…家主は?」
「買い出しいったぜー。珍しいよな自分で行くなんて」

友人宅の家には、家主のローではなくシャチがいた。キッドとローの共通する友人の1人である。勝手知ったる部屋でシャチはソファーにだらしなく座って、キッドに顔だけ向けていた。
テーブルには菓子や飲み物が出ていて、キッドはそこに途中で寄ったコンビニの袋を無造作に置く。

「へー…って、お前何観てンだよッ」
「何って…観てわかんねェ?」

部屋に入ったときから、音と目の端に映りこんでくるそれには気が付いていた。キッドは顔を顰めながらシャチを見れば眼鏡の奥の瞳と、口元がニヤニヤと笑っている。
贅沢にも42V型のテレビには女のあられもない姿がでかでかと映し出され、スピーカーからは甘ったるい声と呼吸が聞こえてきた。

「トラファルガーがよく許したな…」
「何言ってんの。ノリノリだったぜェ?なんてったって僕たち健全なオトコノコじゃない」

へらへらと茶化す様に笑うシャチにキッドも呆れたようにため息をつき、ソファに腰を下ろした。

「ンだよこれ、体操着って誰の趣味だよ」
「誰の趣味でもねーけどさ…コンピレーション物なんだよ。いろいろ入ってんぜ?さっきはコンビニの制服だった」
「ふうん。あー…顔好みじゃねェんだけど。体操着似合ってねェし」
「だぁよなァ!おれもこれ抜けねェって…もう萎えちゃって萎えちゃって」
「勃起させてんのかよ!」
「そりゃするだろ!さっきのコンビニの子は良かったんだぜ?フェラだけだったから抜くに抜けなかったけどさ」
「キモッ」
「ひどッ。チャプター変えてみっかな…なぁ、ユースタスってどんなん好みなワケ?」

シャチはリモコンを手で遊ばせながらキッドを見た。相変わらずニヤニヤと笑ってキッドから聞き出そうとする。チャプターはまだ替えられておらず不評なAV女優が所謂大人のオモチャで一人遊びを繰り広げていた。

「あー、清楚系?」
「え、意外と純情派かァ?ユースタスって」
「意外とってなんだよ…ま、あーいう下品な顔?つーかだらしねぇ胸ダメだわ」
「だらしねぇって、この女優の褒めどころじゃん。巨乳って」
「でけぇだけじゃなァ…」
「おっぱいはでかけりゃいいと思うけどなぁ…パイズリとかロマンっしょ?」
「挟める程度のでかさがありゃ、形とかいい方がいいだろ」
「型崩れした身体もおれは好きだけどなー」

漸く、チャプターを回し女教師モノになる。スレンダーボディにスリットの深いタイトスカート、黒の網タイツに、胸元のあいたブラウス…典型的なそれが映った。

「きっつい顔してるけど、美人だよな」
「だな」
「早送りしていい?おれ割と本番好きなんだよな…ストーリーぶっ飛ばしたい派なんだけど」
「勝手にしろよ…つーかこれ観続けんのか?」
「え?なんだよー興味ねェ振りはいいって」
「振りじゃねェ、」
「お、手マン〜!おれ潮噴きとか萌えるッ」
「な、おい!」

リモコンを傍らに放り投げ、シャチはベルトをしていないジーンズのボタンを外し、おもむろにファスナーを下ろした。キッドはぎょっとして声を荒げる。

「てめっ!何してんだっ」
「何って、ナニを…」
「おっまえ…馬鹿だろ!?」
「えー?AVなんか抜くために観るんじゃん」
「おれが気分悪ィだろ!」
「なんだよー、男子高校生なんて一緒に観ながら抜きながらってのはフツーだって」

鼻歌を歌うようにシャチは自分の一物を掴み、引っ張り出す。立ち上がったそれを軽く握りこんで小刻みに手を上下した。

「潮噴きってさー、撮影前に水がぶ飲みするとか膀胱に水入れるとか言うやついるけどロマンがねーよなァ」
「うわ、バカお前便所いけよ…まじ最悪」
「お、お!今の巻き戻し巻き戻しッ、リモコンどこ行った!?」

スピーカーからの音に混じり、キッドの隣から生々しい摩れ音がする。シャチの興奮した横顔と巻き戻される動画にキッドは帰ろうかとさえ思う。

「ユースタスも観てれば勃つだろ?つかもう勃起してる?」
「わ!わッ!触ってんじゃねェ!!」

自分の一物を握る手とは逆の手でキッドの股間を鷲掴みにするシャチの手をキッドは払いのけた。
友人宅で観るAVと、友人が手淫を始める異様な雰囲気にキッドも困惑しながら、僅かばかりの興奮は抑えきれなかった。
テレビにでかでかと映る女の局所から噴き出す水に、快感に濡れた嬌声。男たちの下卑た台詞。

「と、トラファルガーが帰ってきたらキレるじゃ済まねェぞ、てめぇ…」
「ああ、平気だろ?おれ夕べから泊まっててさ一緒にAV観てたけどローも隣で抜いてたぜ?」
「はぁ?!」
「何騒いでんだ…よぉ、スースタス屋」
「トラファルガーッ」
「ロー、遅かったなぁ」
「まぁな。それよりシャチ…てめぇまた抜いてんのかよ。猿みてぇな奴だな」

ローはシャチをバカにして鼻で笑いながらも自慰行為を咎めることはなく、手に下げた袋を持ちキッチンへ向かう。

「ユースタス屋。何を飲む?」
「おれのコーラ買ってきてくれた?」
「てめぇにゃ聞いてねェ」
「…なんでも」

困惑するキッドを尻目にローとシャチは気にした風もない。3人分の飲み物をもってローはキッドの隣に腰を下ろした。

「また潮噴きか…まぁテクのねェお前は女に潮噴かせるとか夢のまた夢だしな」
「るせーな!邪魔すんなよ出そうなとこなんだッ」
「チッ、イカ臭くなんだろ…。おい、床とかソファーにぶちまけんじゃねーぞ」
「あ、そうだティッシュ、ユースタスティッシュとって」
「…、バカじゃね…?」

本気で抜こうとしているシャチにキッドは引き腰になり、なんとなくシャチから遠ざかるように座る位置をずらした。ローの肩と触れるほどに近くなるがキッドはそれを気にするどころではない。
ローはキッドに代わり箱ごとシャチにティッシュを投げつける。
顔の側面に当たりぱたりとソファに落ちるティッシュ箱から無造作に数枚のティッシュを抜き出してシャチは一物の先をそれで覆った。

「そう言えばユースタス屋」
「っ、あ…ンだよ!」

耳元に吐息が掛かるほど近くにローの声がする。キッドはびくりと肩を跳ねさせて、それを誤魔化す様に大げさにローへ返事をする。
シャチの上擦った吐息と、クチクチと小さな音を立てる濡れた音。それを意識して聞かないようにしながら、ローの問いかけを聞いた。

「ユースタス屋は抜かねェのか?」
「…、っ」
「あぁ、もしかしてシャチ好みの女じゃ抜けなかったか。女の趣味が悪ィからな…こいつ」
「おい、失礼なこと言うなっての。それにユースタスだって本当はムラムラ来てるみたいだぜ?硬くなってたもんなァ?」
「へぇ…?」

当たり前のように聞いてきたローに信じらんねェ、そんな顔をしたキッドはつい悪態も飲み込んでしまう。
シャチはティッシュを丸めながら再びチャプターを回し、動画はシーンを次々に替えて行く。

「ユースタスは清楚系がいいと…んー、黒髪ってところでこの子なんかイケそうじゃね?」
「清楚系か。…それよりシャチ、なんでユースタス屋が硬くしてんの知ってる」

ムッと顔を顰めたローは舌打ちをし、おもむろにキッドの下肢を撫でた。ジーンズの太腿から股間までに一気に手を滑らせ中心をぐっと掴む。

「!?て、め…!」
「ああ、本当だな…っと、暴れるなユースタス屋。…シャチッ」
「おっと、ほらほらユースタスゥ。純情ちゃんがパイパンおまんこ広げてるぜ?」
「…!」

ローから飛び退こうとするキッドを、シャチは背後から両手を押さえに掛かる。キッドの手首を掴むその手は今まで手淫をしていた為か熱く、拭き取りきれなかったそれなのか、それとも汗なのか判別の付かないべとつきを纏っていた。

「放しやがれッ!お前ら何やってんだクソ…!」
「チッ、その手で触りやがって…」
「なんだよ、そう言うなら放してもおれはいいけど?あ、わー…2人ともマジで画面見ろって。可愛い顔してさぁ…」
「ああ?……ふふ、純情そうな女に限って好き物なのかもしれねェなあ」

じたばたと力の限り暴れるキッドの四肢を押さえながらシャチとローは画面を見る。キッドもその隙にと身じろぐが、目に入る映像に一瞬抵抗を忘れていた。
確かにキッド好みの清楚可憐な女優だったが、大きく開いた足の間の奥の窄まり…女性器ではなく肛門の方にに男優の潤滑液に濡れた指を3本銜え込み蕩けきった表情を見せていた。
激しく肛門を甚振る手の動きにじゅぷじゅぷと卑猥な音が響き、女性器からは水が飛沫を飛ばしながら尻の方へ滴らせている。

「う、あ…っ!」
「ユースタス屋、さっきよりも硬くなったぜ…余程好みだったみてぇだな」
「この子、アナル好きなんだろうなー。演技でそう見せてんだったらすごいけど」
「辛いだろ?抜いてやろうか」
「は、ァ…!?んなっ、やめろ…やめろって!男に…ッ」
「男同士だからいいかもしれねェぜ?女よりチンコのことなんて知ってるしな」

ははは、と笑うシャチはキッドの身体を引っ張り上げて自分に凭れかからせる。背の高いキッドでも十分寝転ぶことのできる広いソファに、ローにより足まで掬われて横たわることになった。
急ぐ荒い手つきでローはキッドのジーンズの前を開けぐいっとジーンズを引く。

「尻を上げろユースタス屋」
「馬鹿言うな!だれがっ…イ、やめっ」
「っ、と…まぁそう言わずにさぁユースタス」

シャチによる介助で少しばかりキッドの腰が浮くとローはすかさず下着と共にずり下げた。
揉み合ううちにまくれ上がったシャツの裾から腹が覗き、ズボンと下着を下げられた下肢は髪の色と同じ性毛と下着に引っかかり押さえつけられている性器が見え隠れする。
キッドは身に降りかかる行為に目を見開き、羞恥からカァアと赤面した。

「っわぁあ!お前らフザケんな!!殺す!マジ殺すッ」
「うわっ、んだよ…お前のちんげ赤いのなんてみんなで風呂行ったとき知ってるし今さら…」
「それとこれと違ェだろ!」
「痛ッ…足癖悪ィなユースタス屋…」

腕を蹴られて苦笑いするローは躊躇いなくキッドの性器を掴んだ。下着を引っ張って性器を掴み出すと熱く滾ったそれをローは掌にやんわりと握りこみ上下にしごき始めた。

「でけぇな…ふふ。ユースタス屋はどうするのが好みだ?裏筋?付け根か…?カリ首が好きならおれもそうだ」
「ヒッ!うあー!触んなッ!トラファルガーッ」
「おれは先っぽにちょっとだけ爪立てんの好きだけどな」
「お前には聞いてねェ」
「ユースタスもそれが好きかもしれねェだろ?ちょっとピリッてすンのがクセになるんだって」

いつの間にか、スピーカーから流れる女優の嬌声や音はBGM程度にもキッドの耳には入らなかった。画面を見る余裕があるわけもなく、男である友人の骨ばった手が好き勝手に動くのを身震いしながら感じていた。

「くっ、ぅ…!ッ、ふ…」
「気持ちいいだろ?ユースタス屋…そう頑なになるなよ」
「そんな唇噛むと危ないぜ?別にあとでからかったりしねェから素直に喘いじゃえよ」
「だ、れが…あっ!あぁっは…」

ローの手は幹を摩りながら、逆の手で睾丸をわやわやと揉みしだきキッドの腰は快感から逃れるように揺れ動く。
目をぎゅっと閉じ、唇を噛みしめて耐えるキッドの表情をローとシャチは眺め、ごくりと喉を鳴らした。

「ユースタス…」
「止めろ、シャチ」

何時の間に互いの指を絡めるようにしてシャチはキッドの手を掴んでいた。肩に凭れるキッドの横顔を見つめシャチは吸い寄せられるように顔を近づけるとローの尖った声に邪魔をされた。
キッドの唇と触れ合う直前でシャチは顔を引くと、あからさまに舌打ちをしそうになるのを堪え面倒くさそうにローへ視線を寄越す。

「なんだよ…」
「それもおれが先だ」
「これくらいおれが先にもらっても構わねぇと思うけどなァ…あんた1人じゃこの状況だって無理だったろ?」
「てめぇはそもそも興味はねぇんだろうが」
「いいや、興味はある…たった今、興味が湧いたし」
「…!」
「!?なっ、に…?」

ちゅ、とキッドの頬にシャチの唇が触れる。軽く触れたそれは直ぐに離れたが、頬に触れた何かにキッドは驚いて目を開け、ローは噛んだ奥歯が軋むほどに激昂した。

「…あー、ハイハイ。悪かったよ…けど、面白くねェな…」

怒りを燃やすローにシャチはうんざりした様に溜息を漏らすと、キッドから片手を放しローの胸倉を掴み引っ張った。キッドに覆いかぶさるようになったローは、突然のことに瞠目しながらシャチと視線が合わさる。

「!!?」
「っ…!?」
「…へへ…うわ、最悪…」

キッドの目の前で、友人2人の唇が重なり直ぐに合わさりは解けた。呆けるキッドに、わなわなと震えるロー。そして当の仕掛け人は本当に嫌そうな顔をして舌を出した。

「けどそれでローがキスしても、ユースタスとおれは間接キスってわけだ!」
「死ぬほどに最悪だ!」

してやった!と無理にテンションを上げて吠えるシャチに、ローは唸りながらゴシゴシと袖で唇を拭った。

「なんだよ、早くしねェならマジで先に…」
「ッ、消毒だ、ユースタス屋!!」
「ン!?っ、ぐ…む…!!」

肩を怒らせたままローはキッドの頬を両手で掴むと勢い任せに口付けた。シャチとのキスを塗り替えるように、劣情にまみれた口付けは嫌がるキッドをものともせず長いこと交わされた。
こじ開けられた口の中で、舌まで絡む深いキスにキッドは苦しさから涙を浮かばせる。

「はっ!はぁっ!ぅ…けほっ!ケホッ!」
「っ…クソ…!シャチ…覚えてろよ…」
「覚えてるかンなもん!もう忘れたね!」
「んむぅっ!〜〜〜っ、…!」
「てめぇ!」

やっとローとのキスに解放されたキッドはすぐさまシャチの唇で再び塞がれ、呼吸も奪われる。
顎まで滴る唾液が冷えて冷たくなるのも、キッドにはどこか遠くの出来事ことのように思えていた。






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多分、後半に続く。
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