何度キスをしただろうか。あの日から、変わった…いや元に戻ったと言うべきだろう。トラファルガーは今までのようにおれを呼び、おれに触れる。
冗談言ってすぐにちょっかい出して来たり構いたがったりしてウザったくもあるけど、手を繋いで歩いたり、キスをしたり自然にできるようになった。

その先を、望んでもいいよな。
男の時にはおれが嫌だって言ったから、おれの覚悟が決まるまで待つって言ってくれた。
勿論、男同士のヤり方に恐怖したのもだけど、恥ずかしさとか照れとかの方が大きかったんだ。
トラファルガーが強引に押し倒しにでも来ていたらきっとおれは流されていただろうけどな―――…。




彼奴の悪戯?





キッドとローの蟠りが解けてもう一月を過ぎた。今では本当に仲の良い恋人同士であり、周知のことだ。
週末の金曜日、今日も2人で帰路についている。徒歩で登校したので帰りもゆっくりしたペースで道のりを歩いた。学校でも昼休みなどには顔を合わせてはいるのだが、1時間ごとの休み時間や授業の出来事などの話題、友人たちのことで下校中の話も尽きない。
特別な事情や用がない限り、朝にローがキッドを迎えに行き、帰りは送り届ける…これが常であった。

「明日、どっか行くか?」
「んー…別に、行きたいところはねェけど」
「そうか…。じゃあ」

キッドが一人で暮らすアパートに着き、楽しいと思えた帰り道が淋しいものとなってくる。明日は土曜でローはそれとなく遊びに誘ってみるがキッドの返事は曖昧だ。
ローとしてもキッドを連れて行く場所や特に誘いたいイベントを考えてなかったのでそれきり言葉が続かなかった。
歯切れ悪くなったが、これ以上話題もないのでローは帰ろうと踵を浮かせる。

「あ…」
「……どうした?」

咄嗟にキッドの指がローのブレザーの裾を捕まえ、ローは驚きながら浮かせた踵を戻してキッドの方へ振り返った。

「……、家。上がってけよ…」
「ユースタス屋…」
「時間とか、気にしねぇだろお前。…行こう」

するりとブレザーから放した手でローの手を握り、つい、と引っぱる。
手を引かれゆっくりと足を踏み出したローはやんわりとキッドの手を握り返した。




ローが暫くぶりに訪れたキッドの部屋はどこも変わってはいなかった。ただ、見慣れたはずのこの部屋に女子の制服を着た彼女≠ェいることでまったく違った部屋に感じていた。

「…?どうした、座れよ」
「ああ…」

遠慮なんかした覚えはなかったがどうも得体のしれない緊張感ばかりが増してローは妙な居心地の悪さを感じながら腰を下ろした。
暫くしてインスタントコーヒーの入ったマグカップを差し出され、それに口をつける。
キッドもローの隣に座ると幾つか菓子を開けるとコーヒーを啜った。スナック菓子を咀嚼するシャクシャクを言う音が静かな部屋に響く。

「テレビ、まだ面白ぇのやってねーよな」
「そうだな…ニュースくらいだろ、今やってんの」
「ゲームでもするか?」
「そうだな…」

ローもキッドも、今までどう過ごしていたのだろうと思い返していた。キッドが男の身体だった頃…まだ恋人ではなかった頃はローがここへ押しかけてきて口喧嘩をしながらゲームで勝負したりくだらないことを喋ったりしていた。
恋人になってからは…それまでと大して変わらなかった気がする。ただボディタッチは増えたし、キスしようとローが迫ったりじゃれあったりしていたのを思い出す。
何度もそれとない雰囲気に持ち込もうとするローを躱していたのはキッドだった。

「…トラファルガー」
「…」
「いいぜ?」

持っていたマグカップを置き、キッドはローに身体ごと向き直り、一人分空いていた距離を詰めた。
膝立ちをしたキッドが一歩近寄り指先でローのシャツを引っ張る。自分がしていることにたいして恥ずかしくなりキッドは目元を赤く染めるが意志の固い目がローをじっと見つめた。
ローは念願とも言える誘いにクラりと傾きそうになるが押し留まって、自身のシャツを握りしめるキッドの手に自分の手を重ねた。

「無理すんなユースタス屋」
「ムリ、じゃねーよ…もう、いいから…大丈夫だから」
「でも…」
「前のおれのこと、抱いてねェのが気になるか?」
「…。おれは、ユースタス屋だから好きなんだ…ヤることだけ考えてるんじゃない。女になったから都合がいいなんておれは…」
「…じゃ、もうずっとヤらねぇつもりかよ…バカじゃねぇの?おれ元に戻るかわかんねェんだぞ」
「…でも、可能性かないわけじゃないだろ。ユースタス屋、考えろ…お前の身体のことなんだぞ?戻れるかもしれないのに、もしおれとヤったせいで戻れなくなったなんてことになったら…」

どうするんだ。とローは感情の入り乱れた表情でキッドを見つめた。

「まだ数ヶ月そこらだ…保証はないが、可能性を捨てるのは早いだろ?」
「お前…そこまで……」
「どんなユースタス屋でも好きだ…それはかわねェけど、ユースタス屋は元の自分が一番いいだろ?だから自棄になるな…まだ、無理して女になろうってするのは早い。もしそのまま元に戻れなくなっても、その時は遠慮なくおれがもらってやるから…」
「…っ」

ぎゅう、とキッドはローに抱きついた。ぐりぐりと肩に顔を埋め、出せる力の限りローにしがみ付く。
ローはキッドを抱きとめて、抱きしめ返した。お互い息が苦しくなるほど抱きしめあって身体を寄せる。
キッドは、勿論元に戻れるものなら早く戻りたかったが、今言われた言葉だけで十分な気がした。いつか元に戻っても、このまま戻れなくともローがいてくれるなら、それでいいと思いさえする。

「…ロー…。ロー」
「…キッド?」
「抱いてくれ…」
「お前っ」
「うん…だから、男の抱き方でいいから、やろう…。そうすりゃいいだろ?男の時、ヤってたかもしんねェんだからかわらねぇ筈だ」
「…」
「もう、我慢したくねぇし、させたくねェんだよ…」

ローの手を取り、キッドは自身の胸の膨らみに押し付ける。服越しの掌に触る柔らかさにローの手が強張るがそろりとその丸みを包むように指を曲げた。
密着させた身体を離して、ローはキッドの頬や瞼など顔の至る所に唇を落とし唇を食んだ。
唇の堺を舌先で撫でると素直に開く口腔に、更に舌の先を伸ばしてそこに待ち構える舌と触れ合わせる。
熱く、甘い口腔を味わうと一旦唇を離した。

「…本当にいいんだな?」
「ん…。待たせて、悪かった」

キッドの着替えていなかった制服のブレザーを肩から落とし腕を抜かせる。ブラウスの上から肩や首筋をなぞってから第2ボタンから下のボタンを外していく。キッドは恥ずかしさで俯き気味になりながらもただじっとされるままにしている。
ブラウスも脱がされ上半身はキャミソールとその下にブラをつけているだけだ。ローは吸い寄せられるように白い鎖骨に唇を触れさせて、痕がつかない程度に吸い付いた。上から見下ろせば胸の谷間が見え、先ほど触れた時の柔らかさを思い出す。

「っ…あ、の…ベッド、いかねェ?」
「…ああ、そうだな…」

キッドが恥ずかしげに言うとローは頷いて、ブレザーを脱ぎながら立ち上がった。キッドはそんなローを見ていられなくて慌てて背を向けると少し迷った末に自分で靴下を脱ぎ、ベッドの上に座る。
ギシリと鳴るベッドにキッドは緊張するが、こめかみに落とされたキスに直ぐほだされてしまう。

「靴下、脱いだのか?」
「お前…靴下だけは穿かせたままとかにしそうだから」
「そんな趣味ねぇよ…でも、次はそういうのもやってみるか?」
「やらねぇよ、ばーか…」

漸く2人して笑みを零し触れるだけのキスをした。ローの手がキッドの背に回りキャミソールの上からブラのホックを外す。

「全部脱がせてもいいか?」
「…ん」

キッドが頷くとキャミソールとブラも一緒に脱がされ、スカートのホックを外されジッパーが下がる音がする。腰を浮かせてくれと耳元で囁かれ、キッドがもぞもぞと腰を浮かせるとスカートと下着が取り払われた。
何も身に着けていないキッドの裸体がローに晒される。

「綺麗な身体だな…」

覆いかぶさるようにして、キッドをベッドに寝かせたローはキッドの足の先まで目に焼き付けるようにして見る。胸の頂に薄く色づいた粒を見つけると親指の腹で触れた。

「ぅ…ん…」
「嫌になったら言え…殴ってもいいから」
「ならねぇよ…好きにしろ…。そのかわり、あんま焦らされんのヤだから、早くして…」

固く尖った胸の頂を舌で転がし、キッドが艶のある声を漏らし始めるとローは乳房を揉んでいた手を下腹部へ滑らせた。へそを通り過ぎて薄い茂みの上を撫でるとキッドが息を飲む。

「少し体勢を変えるぞ」

キッドの足を膝から救うと左右に開かせて、ローは身体を割り込ませる。恥ずかしさにキッドは内股になるがローの身体に阻まれて足を閉じることができなくなった。

「ほんとに、コッチでいいんだな?」
「っー…も、聞くなっ…」

ローの指が滑って、指の腹が撫でた窄まりがヒクりと動く。男の身体とっは違い縦に割れた恥部はキッド自身さえ良く見たことがない。ローは極力恥貝に触れないようにするが会陰の湿り気を指に感じると、キッドが愛撫をちゃんと感じていたのだと実感した。
指先に乗せた滑りを後ろの蕾に刷り込むように指を動かす。緊張で力の抜けない蕾の周辺を根気強くマッサージし緊張を解いてく。

「ふ…ぅ…ん」

足の力も抜けて力なくローの身体に凭れている。それを見計らってローは唾液を塗し濡らした指をアナルに少しずつ差し込んだ。きゅう、ときつい窄まりが指に絡みつく。

「ッ、あ…くぅっ…」
「痛いか?」
「っ、ちが…へんなかんじ…はぁっ、あ…」

浅い部分で抜き差しし、襞の内側も丁寧に濡らそうと淵をなぞる様に指をぐるりと回す。排泄時と異なり、逆側から押し開かれる圧迫感にキッドの直腸は異物を押し出そうと収縮するが、ローの指は反対にするすると飲み込まれていく。キッドは女の芯がじんと熱くなるのを感じた。





「キッド…、キッド」
「あ…ふ…、なに…」

どれくらい経ったのか、ローが声を掛けるとくったりと蕩けきった表情のキッドが返事をする。未知の部分を開かされ体内で蠢く指をひたすらに感じていたキッドはすっかり身体を弛緩させていた。

「もう十分大丈夫だと思うが、少しは痛ェたくさせちまうかも…平気か?」
「…ああ、へいき…。ロー…」

体内をほぐしていた指を引き抜き、ローはペニスをキッドの尻に押し当てた。熱い一物が肌に触れ、キッドは思い出したように恥ずかしくなり耳まで赤く染める。ドクドクと胸が張り裂けそうなほど脈を打ち、少しだけ怖くなったがそれを追いやる様に目の前のローの首に抱きついた。

「力抜いてろよ…」
「ん…、あ…−っ、っ、…ぃ!」

十分に解かしたとは言え、太さのある筒状の一物を突き立てられれば身が裂かれそうな痛みと圧迫がキッドを襲う。ギリギリと軋む括約筋をくぐるまで小刻みに抜き差しを繰り返し、太い部分が沈めば痛みは大分楽にった。

「はあっ、あ…はー…はァ…ッ」
「ン…きついな…。キッド…?」

痛みのせいかキッドの目尻から零れた涙を拭ってやりながら、ローはあやす様に腰を撫でた。
無理に伸ばされた窄まりの淵がジンジンと熱を孕んだような痛みがするが、挿入れた時のような強い痛みは遠のいたためキッドは平気だと繰り返した。しかし、拭う傍からキッドの瞳からは涙が幾筋も零れ落ちていく。

「…ふ…、…」
「…苦しいか?」
「ちが…なんか、わかんねぇけど…止まらな…ッ」

涙は、繋がった喜びと安堵により止めどなく溢れ、キッドはひくひくとしゃくりあげる。ローは健気に映るキッドを抱き寄せてキスをした。見つめ合い、深く口付けて全身が溶け合って混ざりそうなほど求め合う。
ローがゆるりと腰を穿つと体内を行き来する熱にキッドは声を漏らした。
内壁を擦りあげ、引っ張られような感覚も慣れないがぼやける視界に映るローの表情に堪らなくなり、体内のローを締め付けた。

「あ…あっ…う、ふぅっ」
「キッド…」
「ッん!んっ…!」

ローが不意にそこを突き上げた時、キッドは驚いたように腰を引いた。直腸を隔てた子宮周辺を押し上げられ、初めて快感に近いものを得る。だがキッドにはその快感がどこからきているのか理解できずに、もどかしく身を捩る。
男のように前立腺がるわけでもなく、初めてのアナルセックスでは唯でさえ感じにくい。キッドは子宮を突かれて味わうもどかしいほどの感覚だけを得ていた。
圧迫と、揺さぶられるだけのキッドは眉を顰め、ローにはその表情が苦悶のものにしか見えなかった。

「ふぅっ!?やっ、あ!あっ、あ、それ、やぁっ」
「嫌じゃないだろ…?く、…こんな、締め付けてるじゃねーか」

キッドを感じさせるため、ローは薄い茂みの奥へと触れた。最初に触れた時よりも濡れている割れ目を指先でなぞり、ぬかるみを帯びた指で女芯を摩った。
女が一番感じやすい部分に触れられ、キッドは女の身体で初めて強い快感を得る。男の時、ペニスを摩るような直接的な快感がぞわぞわと這い上がり、ローの手で与えられる絶え間ない刺激に身悶える。
反り返った背がシーツから浮き、アナルに銜え込んだローを締め付けた。

「ゃう…やぁっ!ローっ、だ、めっ…あぁ!」
「大丈夫だ…イきそうなら、イけ…我慢すんな」

ローもキツい締め付けに喘ぎ、息を弾ませながら穿つ速度を上げていく。同時にキッドの女芯を摩る手も速め絶頂へ促した。

「ひ、あ!あぁあっ!」
「っ、ン…!」

キッドが絶頂に達すると、いっそう強まる締め付けに耐えられずローはかろうじて浅いところで精を吐き出した。強い締め付けの中、無理に引き抜いてしまうとキッドに痛みを与えてしまうかもしれないと、残った理性でローは思いとどまった。

「っ…ふ、ぁ…」

余韻で身を震わせるキッドは、力が抜けたのかローにしがみ付いていた腕をぱたりとシーツに落とす。忙しなくひくついていた体内が落ち着いてくると、ローはゆっくりを腰を引き抜いた。
元の通りに慎ましく閉じた窄まりに、秘部からにじみ出た蜜がとろりと伝いシーツに落ちる。

「キッド」
「…はぁ…はぁ…。ロ、ぅ…」
「好きだ…」
「…うん…。おれも、…」

満ち足りた表情でキッドは頷くと、恥ずかしくなったのか力の抜けた身体を必死に起こして床に落とされていた掛け布団をベッドに引っ張り上げて抱え込む。
きっと、女の身体だからと言う訳ではなく、男の身体でもそれなりに恥ずかしかっただろうなとキッドは考えてしまい、いまだ異物感残る尻と初めて触られた女芯の余韻に浸った。





すっかり日も落ち、キッドはバラエティ番組を見ながらコンビニの弁当をつついていた。向かい側ではローも同じようにしている。
初めて身体を繋げた後、へっぴり腰になりながらキッドは風呂に入り汗を流した。べとつく下肢をおっかなびっくりで触れてみると、尻の穴は残っている異物感は酷いものの何も変わってはいない様でほっとしたが、秘裂は驚くほどぬめりを帯びていた。
キッドが風呂から上がると、玄関の扉が開く音がし、見てみればローだった。キッドが風呂に入っている間に、キッドの自転車で近くのコンビニまで行き弁当などを買って帰って来たらしい。

「つまり、…処女でいろっつーんだろ?」
「そうだ。そんなことで戻れるかはわからねェけどな…」

そう言ってローは困ったように笑んだ。キッドの身体は今や女のそれだが、処女を奪うことで「女にしてしまう」ことが躊躇われたのだ。
苦し紛れにアナルセックスと言う手に出たが、ローは喜びの反面後悔もしていた。

「おれがヤりたがったんだからいいだろ…」
「ユースタス屋…」
「もー、いーんだよ…お前が、あんな風に言ってくれたのが嬉しかったから、もうどうなってもいい。おれを女にするもしねぇも、お前に任せるぜ」
「お前…そんな大事なモンおれに任せるなよ…。自分のことだぞ?」
「おれのことだから、お前に任す……いまされても文句言わねェよ」

キッドは自分の弁当に入っている嫌いなおかずをローの弁当に入れ、ローのおかずから自分の好きなものを取って勝手に交換する。
ローは深刻に考えていないようなキッドを呆れたように見た。襟ぐりのあいた大きめのシャツを着て、ショートパンツを穿いた脚で胡坐を組んで猫背気味に座る様はまったくもって男の様な姿そのものであった。

「…ま、ジュエリー屋みたいな女もいるしな」
「はんあ?(なんだ?)」
「なんでもねェよ。…それより、咥え箸するなユースタス屋」

ローはどこか吹っ切れたように笑い、エビフライを頬張るキッドを眺めた。
どうなろうが、この先も共に過ごすことには変わらない。ただ、戸惑ったり足掻いたりすることは大切だと思った。
その末に、キッドが本当に女としての人生を歩むことを選んだその時は彼女≠ニ一緒に歩んでいこうとローは思いを馳せるのだった。

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