一足先に歳を取ったが、漸く。
またおれたちは同い年になる。


「高1の時は、CD貰った」
「あぁ…、誕生日近いって知ってその場でお前の好きなバンドのアルバムを買ったんだったな」
「高2の時は」
「ライブデートだな。すげぇ楽しそうだった」
「覚えてんだな」
「勿論だ。高3の時はブレスレットだった…お前はすぐ外しちまったけどな」
「……嬉しかったのは本当だ」
「知ってる。どうせ別れて高校卒業してから付けてたんだろ?」

おれの誕生日を境にしたくらいから、ユースタス屋との甘い時間が増えた。
セックスの後の倦怠感が心地よく、でも眠くないそんな時におれたちが共有していたあの頃やおれたちが互いに知らない時間の事をぽつりぽつりと話すことが幸せに感じられた。

「ブレスレットとか…重かったか?」
「…」
「揃いだったし、首輪みてぇだとか思ったんじゃねぇ?」
「……自覚してんじゃねぇか」
「そうだな。自覚してた…でも、あの頃は束縛しても大丈夫だって変に自信があったんだ。そんなもんだろ?」
笑うおれから視線を外すユースタス屋がもそりと枕を抱き抱える。ユースタス屋は願掛けも誓いもしたいと思う質じゃねェから理解が出来ないのかもしれない。

「お前の誕生日は…モノは要らねぇって言ってだろ」
「そうだな…」

高校1年のおれの誕生日は出合ったばっかで誕生日当日にそれをしったユースタス屋からおめでとうの言葉とコンビニのケーキをもらった。

「2年の時、どうしてもユースタス屋が欲しかった」

付き合うようになって身体も数回重ねていたのにそれでも足りなくて、モノは要らねぇからユースタス屋をくれとねだって幼稚な愛を死にたくなる程沢山囁いて掻き抱いた。3年の時も…3年に上がる前にライター貰ったしそれで満足だった。ユースタス屋におめでとうって言ってもらえるだけで良かった。

「おれは…ただ、テメェは俺の身体抱きたいだけなんじゃねぇかって」
「んな訳ねぇだろ」
「あぁ…だからライターやって、テメェが喜んだ時はやって良かったって思った。けど…」
「なんだ?」
「ブレスレットなんてモン…おれは欲しくなかった。テメェはブレスレットあるからこの先も大丈夫だろ、って顔してたし」
「…んな顔してたか?」
「してただろ」

そっぽ向いた背中が丸まり肩甲骨が浮く。
そんなつもりはなかったと思うがユースタス屋がそう言うならおれはそんな顔をしていたんだろう。

「……、テメェみたいに」
「おれみたいに?」
「ねだってたらなんか変わったか?」

ユースタス屋が欲しいとねだったおれのように、ユースタス屋も、おれにねだってくれていたとしたら。

「少なくともブレスレットなんて贈らなかっただろうな」

例え既に買っていたとしても渡さなかっただろう。

「…ユースタス屋、誕生日何が欲しい?」
「…、……」

こちらを向く背中にキスをするとひくりと揺れ、冷えた身体にそっと腕を回すとかたくなに縮こまる。

「そんな安物でいいのか?」
「…いい」
「ふふ…貰ったからにはもう返してくるなよ?…誕生日、おめでとう」






上に乗ったユースタス屋が上ずりのぼせたような声で零した言葉は少しだけおれを責めているようで、そして淋しそうだった。

「ブレスレット、」
「うん?」
「…錆びたんだ…」
「うん」
「とめる、とこ…っ、……ボロボロんなって…ぅ…」
「あぁ…」
「お前…けっ、こんしたし…そんとき、捨てた…」

「もう、いいかって…捨て……っ」
「ユースタス屋」
「だから…っ…今度は、」

絶対に錆びたり、壊れたりしないのを寄越せ。と、愚かにも昔の二の舞を演じるところだったおれがユースタス屋の誕生日にと用意していたそれをねだられた。




***

あれからユースタス屋は指輪を外す事ははかった。
そして、次からも訪れる互いの誕生日はもう祝いもしなかった。何が嬉しくて取る歳を数えるのかとこの歳になるとそう思えてくる。

ただ、あの日おれがブレスレットではなくて別なものを贈っていたとしておれたちが別れるという事実は変わらないだろう。

おれたちは帰れないあの日の事を思い出しながら未だに手探りで愛し合う。
新聞や雑誌を目から遠ざけて読むようになっても、白髪混りになっても、

「高1の時はCDを貰った…」

同じ話を繰り返しするようになっても、一緒にいようと思う。




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ローの誕生日描画をアンディサイディッドの続編で書いていたのでキッドのも書いてみました。どうこうしたい、と言うのははっきり頭にあるのにどうしてもぐずぐずしてしまう幼い子のような大人心(主にキッド)がコンセプト(?)のしらっと何話か続いていた話ですがこの人らは最期までこんな風にぐずぐずです。


2011-1/10
Happy Birthday KID!!






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