流れる血の熱さは透明な雫となって


    こいつも汗をかくのかと
    当たり前なことに驚いた


痛みを感じそうだと思う程見つめられて、思わず視線を落として目を逸らした。
笑ったのだろう。ふ、と空気が動き、いつの間にか少し俯いた顔の角度に合わせ奴の顔が下から覗き見るように近付いてきた
何をするのか、なんて野暮な事を考える前に冷えた唇が自分のそれに重なったものだから、驚いて顔を引こうとすれば更に強く唇を押し当てられた。
逃げるな、とでも言われた気がして情けなくも硬直するしかなかった
重なっていただけの唇がゆっくりと離れて
おれのぼんやりと開いたままの視界に奴の顔が映る

「ユースタス屋…」

普段の人をバカにするような、覇気のないくせに良く通る奴の声は不確かに滲み揺れてガサガサと耳についた。
なんて、顔してんだ…
安堵したようなあからさまにホッとした顔でもう一度俺の名を呼ぶ声は小さく耳元に囁かれ同時に熱い吐息が耳を濡らしていく

「っ…そこで、喋んなっ…」
「フフ、弱いのか?」

軽口を叩き合う合間にも
ねと、と生暖かい滑りが首筋を這う感覚に身震いし詰まりそうになる息を必死に吐けば、おれさえも知らない声が喉から溢れ零れた

「ぁ…っ…、く…ッ」
「泣いてるみたいな声だ…」

背に回る手が宥めるように軽く打ってくる。
その手つきが優しいとか、泣いてるようだと指摘してくるその声こそ泣いてるみたいだとか胸の片隅で思っていると
余裕そうに笑みを作る奴の眉間に寄る皺だとか、こめかみから顎へと流れて落ちそうな汗が目に入る

「…ユースタス、屋…?」
「ん…だよ」

少し荒いが手で奴の汗を拭ってやって、皺の寄った眉間にキスをした
不思議そうに驚いたように見つめてくる瞳に、思わず笑みが零れて
素直に好きだと…愛しいと自覚をした

奴の人並みに出た感情と隠し切れてない緊張が
おれの幼稚なプライドと恐怖を一掃していく。

「汗、出るんだなトラファルガー…」

笑って抱き付いたら一拍おいて
当たり前だろう、と抱き締め返された。








ロキド、初夜とかその辺…
自分ばかりが戸惑ったり緊張してるんじゃないかと思ってたキッドが、ローも自分と同じように緊張したりしてることに気づいて思わずキュンとなる、と言うようなお話。
キッドのことを好き過ぎてへたれるローも素敵だと思いました
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