「飲むだろう?」

キラーに呼ばれ家に訪ねたペンギンはすっかり慣れた様子でソファに座って寛いでいた。まだその歳ではないと知りつつもペンギンがザルであることはわかっているのでキラーは酒を勧める。

「俺、まだ未成年だけど?」
「どうせ家では飲んでいるんだろ…なら、分からない所で飲まれるより目の前で飲んでくれた方がいい」

皮肉めいて言うキラーにペンギンは笑いながら「じゃあ遠慮なく」と冷酒を飲んだ。

「それで、どうかした?話あるって言ってたけど」
「あぁ…来週の火曜日と水曜日のことだが」
「あ、やっと教えてくれるのか?ずっと教えてくれないから気になってた」
「その、…キッドとトラファルガーも一緒なんだが…泊まりがけで海にでも行かないか?」
「泊まりがけで、海…?」

きょとんとするペンギンにキラーはキッドとに誘われたことから経緯を話す。

「ローは相変わらずだな…」
「まぁ、その方が可愛げがあっていい」
「…あれ?今、俺が可愛げが無いって言われた気がしたけど」
「……海に行きたかったなら言えばいいだろ」

顔をしかめて問うキラーにペンギンは肩を竦ませて矛先はそっちに向いたか、と苦笑した。

「キッドに誘われなくとも海くらい連れて行った」
「うん…。キラーに言えば今すぐでも連れてってくれるのはわかってる」

キッド伝てにペンギンが海に行った事がないと聞かされたことにキラーは少しだけ腹を立てていた。ローのように直接的でも遠回しにでも思っていることを遠慮なしに伝えてくれればいいのだがペンギンはどうにも遠慮の方が先にくるらしく、キラーはペンギンとの付き合い方に困っていた。
キッドやローを含め周りがキラーに対して遠慮をする者が居ないのでそれに慣れたキラーはやりにくい。その分、ペンギンに対しては注意してどうにか心情を読み取ろうと思うも態度にも顔にも色の出ない…。
これまでに顔や態度に出やすかったキッドとペンギンを比べると余りにもペンギンの事がわからなさすぎてキラーは泣きたい心境だった。

「ユースタスと比べるなよ…。キラーだって、ローと比べたらあんまり気が利くししっかりしてるからさ。もっと気分で物言ってくれたりしたほうが助かるんだけど、とか思ってるんだぜ?俺も」
「…悪い…」
「謝らなくていいけど。…海はさ、いつか行きたいと思ってた」
「…あぁ」
「でも夏の海には行きたいと思わなくてさァ…暑いしテレビとかで人がごった返してんの見るだけでちょっとな…」

苦い顔をするペンギンは人込みや夏の暑さが嫌いなようでその辺はしっかり顔に出ている。そんな表情を見てキラーは笑いながら「そうだな」と相槌を打った。

「だからシーズン終わった頃にでも連れてってもらおうかなァとか思ってた」
「…なら、今回はやめておくか?」
「せっかくだから行く。それにまた行きたい時は連れてってくれるだろ?」
「勿論。秋も冬も、春も行けばいい」

大袈裟に頷くキラーにペンギンは目を細めて笑う。そんな柔和な笑顔にキラーは少しだけ照れて顔を逸らすとふと視界に時計が入った。だいぶ遅い時間だ

「もうこんな時間か」
「…酔ったかも」
「お前がか?そんなに強くないぞ、その酒」
「…」
「送ろうか?」
「泊まりたいな」

酔った様子はなくペンギンは声音を低く呟く。
甘い声ともの言う目にそう言う事ばかりに色を出すのは反則だ、とキラーは仄かに頬を染め溜め息をついた。






(……悪いが、質の悪い酔っ払いは相手にしないぞ。トラファルガーに学んだからな)
(あいつ何したんだ…)

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