「海?」
「あぁ、行かねぇか?」
「…4人でか?」
「…それは言うな」



キッドとキラーは月に1、2度…それは絶対と決っている訳ではないのにどちらからともなく誘い食事をする。美味いと評判の店や気軽に飲み食い出来る行きつけの居酒屋などに足を運んだりどちらかの家で酒盛りと言うこともしばしばだ。
今日は行きつけの店で飲み喰いしながら話したり話を訊いたりする。
その中でキッドは思い出したようにキラーに問い掛けた。そう言えば主にこれを聞きたくて誘った食事だったのだと付け加えながら。

「海行かねぇか?」
「海?」
「あぁ…出来りゃ泊まりがけで」

揚げ出汁豆腐を箸で割りつつキラーは珍しい事を言い出すキッドをチラリと伺うと「無理には誘わねぇけど」と苦笑する表情。

「トラファルガーか?」
「まぁな」


少し、照れを混ぜながらキッドは肩を竦ませて一口酒を含んだ。



それは、ローが大学の夏休みに入り数日した日だった。

「海行きてぇなぁ」
「…俺に言ってんのか?」

夕飯の後、梅酒をかなりのソーダで薄めたものを飲みながらローはポツリと呟いた。
対して氷を落としキンキンに冷えた梅酒を飲みながら酒に漬っていた青梅をデザート替りに食べるキッドは、少し面倒だと思いながらもその呟きを拾ってやる。

「独り言だ」
「ヤケにでけぇ独り言だな…」
「海って行ったことねェんだよ…俺んとこは川があったからな」
「ふーん…、なら行くか?海」
「行く」

その言葉を待ってましたとばかりに即答するローにキッドは笑いながら、さてと考える。どうせなら…と年下の恋人を喜ばせてやるために。



「キャスケットは実家帰ってるらしいし悪ィけど丁度いいだろ。ペンギンも海連れてきゃ喜ぶんじゃねーか?」
「まぁ…それはな。しかし…男4人で海か?」
「それは言うな…仕方ねぇだろ」

お互い恋人が男なのだからと言う言葉は飲み込みつつ、キラーもキッドとローを理由にしてペンギンを照れも無く誘えるならある意味楽だと便乗することにした。

「いつにするんだ?連休取るとなるといつでもは難しいんだが…」
「合わせるぜ。多分大丈夫だ」
「あぁ、出来るだけ早めには決める。泊まりがけなら宿もだな…」
「おう。何か所か良さそうなとこ探したんだけどよ…」

行くとなれば2人の行動は早く、早速必要な事を話し始る。意外にノリ良く進む話しはどうやら恋人を思うだけではないようで

「ここは飯が美味いって評判だし、酒のうめぇとこだ」
「こっちは近くにワイン蔵があるぞ」
「どうせなら温泉とかもいいよな」
「悪くない」

自分達も満喫出来るプランを立てている彼らだった。






(まだあいつらには内緒だな)
(あぁ、話が流れたら可哀相だからな)
(じゃ、休みが決ったらまた連絡する)
(おう)


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