胸元の重みが気になって目が覚めた。

「…あのクマと勘違いしてんじゃねーのか…」

すぐに思い至った重みの正体から聞こえる寝息は幸せそうで。
人の身体にぴたりとひっついて顔を埋めて寝るトラファルガーに寝苦しくないのかと少しだけ呆れて、あどけなさの残る寝顔を見ると少し口許が緩んだ

「怠ィな…」

起き上がると少し妙な感じもするがあの痛みの割りには平気そうだったしほっとする。
シャワーを浴びようと脱衣所まで何となく腰を擦りながら歩いた。





「起きろ」
「…だっ!」

声がしたと思ったら有り得ねぇ衝撃がデコに来た。
目を開けると手をぷらぷら振るユースタス屋がいて、あのぷらぷらさせてる手で思い切り叩かれたことがわかった。

「いてぇ…ひでぇ…」
「そっくり返すぜ、その言葉」
「…申し訳ございませんでした」
「ふん…顔洗ってこい。朝飯食うぞ」
「……こんだけ?」
「んなわけあるか。仕事から帰って来たら泣かしてやるよ」
「ですよねー」

笑顔のユースタス屋に苦笑いを返すともう一度額を叩かれたが痛みなんて全然なかった

「ユースタス屋、おはよう」
「…おはよ」






4月も幾日か過ぎたある、春麗らかな朝。


「ユースタス屋ぁ、ネクタイってどう結ぶんだ?こうか?」
「リボン結びなんかすんじゃねぇ!ネクタイにシワが付くだろっ」


ローはいつものように隣りのキッドの部屋に行くが少しばかり様子が違っていた。
普段の寝間着兼用の格好ではなく、ジーンズではあるがYシャツにネクタイと上着を着込んでいる

「大学の入学式ってんな格好でいいのか?」
「まだラフな格好の奴がいるらしいし、いいんじゃねぇか?」
「ふーん、…人のってやり辛ぇな…」
「……」
「ん、出来…」

ネクタイを結んでやりキッドが顔を上げるとローの顔か近付き唇が触れ合った

「何してんだテメェ」
「顔が近かったからつい」

ニタリと笑うローの腹を無言で殴りキッドは時計を見る

「お前バスの時間いいのかよ」
「いて…あ、…んじゃ行ってくる、ネクタイありがとな」
「おう」


5階建て1階につき2部屋。最寄りのバス停徒歩3分、最寄りの駅まで自転車10分。
エレベーターなんて便利なもはない
その、4階。


隣りのドアは今日も変わらず




いつもとなりに 10,7/1



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